遺言をのこすなら知っておきたい「検認手続き」とは

故人の作成した自筆証書遺言が見つかったとき、「検認」が必要なことをご存知ですか?検認は法律で定められており、検認を受けていない遺言では相続の手続きが進められません。そこで今回は、遺言を執行するうえで重要な「検認」について詳しくご紹介します。
検認手続き

大切な遺言書の存在を明らかにし、その状態を記録する検認手続き

遺言の検認とは、「遺言がどのような状態で発見されたのか」を家庭裁判所において確認し、記録に残すことです。検認を受けることで、遺言書の形状や加筆訂正の有無、日付、署名などの状態が明らかになるので、遺言書が検認を受けた後に書き換えられてしまうことを防げます。

また、検認が終了すると、家庭裁判所は相続人の全員に対してその旨を通知するため、遺言の存在がより明確になるという効果もあります。

検認には、遺言書が法的に有効かどうかを確認する役目はない

検認はあくまでも「遺言の状態を記録する」という意味合いで行います。したがって、検認を受けたからといって、遺言が法的に有効と証明されたわけではありません。

遺言がその効力を発揮するためには、法律で定められた形式を満たしている必要があります。例えば、検認を受けた遺言であっても、「作成した日付」や「署名」が記されていなければ、法的効力はないとされ、遺言の内容に沿った遺産分割をしてもらえない可能性があります。
検認

遺言書の検認手続きの流れ

検認手続きは、次の手順で進みます。

(1)検認の申し立てを行う

以下の書類を、遺言をのこした人が亡くなる時に居住していた地域(原則として住民票をおいていた地域)の家庭裁判所に提出します。申立ては遺言を見つけた人や相続人が「申立人」となって行います。

  • 遺言書の検認申立書・・・家庭裁判所で入手するか、ダウンロードする
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言をのこしている人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • 遺言をのこしている人の子で死亡している人がいる場合は、その子の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
  • 遺言書のコピー(遺言書を開封してしまった、もしくは、遺言書に最初から封がされていなかった場合)

上記に加えて、相続人に関係する人の戸籍謄本が必要です。詳しくは、裁判所のウェブサイトをご参照ください。遺言書の原本は、検認当日まで申立人が保管します。

(2)検認日が決まる

検認を実施する日は、申し立てを行なった日から1〜2カ月後に設定されることが一般的で、申立人の予定を考慮して決められます。検認日は家庭裁判所から相続人の全員に対して通知されますが、申立人以外の相続人は検認日に出頭しなくてもかまいません。

(3)検認の実施

申立人は家庭裁判所に遺言書の原本を持参し、検認手続きを受け、発行される検認済証明とともに遺言書を持ち帰ります。検認では裁判所の職員立会いのもと、遺言書の中身を確認します。遺言書に封がされていた場合には、ここで初めて開封して内容を知ることができます。

遺言書の検認を受けないと、相続の手続きが進められない

検認を受けていない遺言では、金融機関での手続きや、不動産の登記ができません。また、検認を受けずに遺言を執行した場合は、罰金を課されることがあります。

検認手続きが必要なのは「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」

一般的な遺言には3つの種類がありますが、検認が必要なのは、遺言者が自分で保管することの多い「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」です。なお、自筆証書遺言については一部、検認が不要なものがあります。

検認手続きの不要な遺言とは

公正証書遺言

公証役場で保管される公正証書遺言なら、遺言が存在していることに疑いの余地はありませんし、内容が偽造される心配も不要です。したがって、検認手続きは省略されます。

法務局で保管された自筆証書遺言

遺言の利便性を高めるため、自筆証書遺言を法務局で預かるサービスが2020年7月にスタートする予定です。公正証書遺言と同様の理由で、検認は不要です。

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タイムリミットのある相続手続きの中で、遺言の検認は相続人にとって一仕事!

家庭裁判所

遺言の検認手続きは、実は、相続人にとって意外に負担が大きいものです。特に注意したいポイントが、検認手続きには時間がかかるということです。

書類をそろえ申立てをした後、検認までは1〜2ヶ月かかりますが、その間、相続についての手続きはストップせざるを得ません。遺産分割の手続きができないのはもちろん、封がされている遺言書の場合、検認までは、その内容を知ることすらできないからです。

また、戸籍謄本は、本籍地のある役場から取り寄せる必要があります。相続人の人数が多ければ、書類集めに予想以上に時間がかかってしまった、という事態も起こりうるでしょう。

相続にまつわる手続きにはタイムリミットがあります。相続放棄をする場合は相続開始を知った日から3カ月以内、相続税の申告と納付は10ヶ月以内に行う必要があります。遺言の検認のために貴重な時間を空費してしまった、となっては元も子もありません。

遺言を作成するときは「受け取る側」への思いやりを忘れずに

遺言

遺言でスムーズな相続を実現するには、相続人への思いやりが大切です。検認が不要な遺言の形式を選択しておくことも、そうした心配りの1つでしょう。

また、遺言は、その形式だけではなく中身にも配慮が求められます。遺留分を無視した極端な内容ではトラブルにつながるおそれがあますし、不動産の共有状態を招く遺言も、原則として避けた方が無難です。

家族への最後のメッセージとなる遺言は、「のこしておいてくれて助かった」と感謝してもらえるものにしたいものです。心をこめた遺言をしたため、円満な相続を目指しましょう。

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