土地の使用貸借|無償で土地を貸すときに知っておくべきこと

土地の使用貸借について、
「無償で土地を貸し借りする場合は、課税対象にならないの?」
口頭で土地の貸し借りを約束しても問題ない?」
これから、土地を無償で貸し借りすることを検討している方のなかには、このような疑問を抱えている方も多いでしょう。

通常、所有土地や建物を貸し借りする際には対価が発生するため、無償で行う「使用貸借」は親子間あるいは親しい知人同士で行われることがほとんどです。親しい間柄といえども、無償で土地の貸し借りをする場合はいくつか注意点があります。

今回は、農地を含め土地の使用貸借における注意点についてご紹介します。

※使用貸借の基礎知識については以下の記事をご覧ください
「使用貸借」とは?

無償で土地を貸す場合でも契約書の作成は必須

土地の使用貸借・契約書

土地の使用貸借を行う場合の基本ルールとして、契約書の作成は必須です。

家族や親戚、知人のような親しい人同士、さらに無償ということもあって、多くの場合は口頭での約束で成立しています。しかし、口約束は双方が言った言わないとなりやすく、後々トラブルを招いてしまう恐れも。トラブル防止のためにも、貸し借りを行うと決まった時点で書面にて契約を交わしておくことが大事です。

ここでは土地の使用貸借の契約書内で行うべき、取り決めの内容についてご紹介します。

土地の使用方法について取り決めをする

土地の使用貸借に関する契約書を作成する際には、土地の使用方法についての取り決めを行いましょう。
使用方法についてのルールを定めていないとなると、貸主の意図していない使われ方をしてしまうことも想定されます。

例えば、駐車場として土地を貸しているつもりが、建物を建てられてしまうことも起こり得ます。

口頭でしか約束をしていない場合、このような事態を招いてしまうのです。お互いに認識のズレが生じ、家族同士でトラブルを招いてしまうかもしれません。事前に、土地をどのように使うべきかを明確に記しておくことが大事です。

土地の原状回復について取り決めをしておく

使用方法に加えて、土地の原状回復についての取り決めを行うことが大事です。

使用貸借している土地の返還を求められた場合、借主は原状に回復した状態で返還する義務があります。法律上では、借主は借りた当時の状態に戻して返還しなければならないと定められているため、本来は貸主が負担すべき費用は発生しないはずです。

しかし、契約書を作成せずに口約束だけで貸し借りを行うと、返還時の契約が曖昧になってしまいます。

貸している土地に建設した建物の撤去費用は、誰が負担するのか、などはトラブルになりやすい課題です。場合によっては、撤去費用を貸主が負担することになってしまうかもしれません。

土地の使用貸借を検討している方は、その場の口約束ではなく、後々起きてしまうかもしれないトラブルを回避すべく、原状回復に関するルールを書面上に残しておくようにしましょう。

土地の使用貸借について「税務」をチェックしよう

土地の貸し借りを行う際は、課税に関するルールも気になるところです。
「無償で貸し借りするから関係ないだろう」と考えている方もいるかもしれませんが、実はそうではありません。

土地の使用貸借の税務に関するチェックポイントをご紹介します。

土地の使用貸借と相続税の関係

借主側が死亡した場合、原則として契約は終了し、使用貸借の土地は相続の対象とはなりません。土地に限らず借りている全てのものは元の持ち主への返還が求められます。

そのため相続の非対象となり、借地権のような強い権利が設定されているわけでもないため、相続関係が発生しない限り、相続税は発生しません。

借主が死亡した後も残された親族がその土地を使用したい場合は、新たに貸主との使用貸借契約を結ぶ必要があります。

貸主側が死亡した場合は、貸主の相続人との間で相続が発生します。相続関係が発生すると、相続人と被相続人という双方の新たな関係性が生まれます。相続人となる方は、相続税が発生することも事前に把握しておきましょう。

土地を貸しているとはいえ、使用貸借する土地は、自用地扱いになるため、相続税の評価額が低くなることはありません。自用地価額がそのまま評価額となり、土地の評価額が高いほど相続税も高くなります。

※使用貸借の土地を相続するケースについて詳しくは以下の記事も合わせてご覧ください
使用貸借の相続|貸主死亡、借主死亡で土地、相続税はどうなる?

親の土地に家を建てた「少しぐらいは」と地代を払うのはNG⁉

土地の使用貸借は、親子や知人の間でよく行われるため、気を遣って「少しぐらいは」という考えから地代の支払いを検討する方もいるかもしれません。

しかし、地代を払うことで贈与とみなされてしまい、贈与税が課税されてしまいます。

地代を払うと、使用貸借ではなく賃貸借という扱いに変化します。賃貸借は、貸主と借主の間で賃料が発生する契約であり、無償で貸し借りする使用貸借の範囲ではなくなってしまうのです。

使用貸借と賃貸借では、課税が大きく変わってくるため、注意しておきましょう。

完全に無償で土地を借りることに少し気が引けるという方は、固定資産税を払うという方法はいかが
でしょうか。

本来は、使用貸借する土地の固定資産税は、地主が負担します。

ただし、借主が固定資産税を支払ったとしても、使用貸借の枠内であるため、さらに課税対象が増えることはありません。課税に関する項目も、双方で確認をし契約書に記しておくことが大事です。

畑をタダで貸す場合のポイント【農地法】

畑のような農地の貸し借りをする場合も、使用貸借が行われる場合もあります。
やはり、親子や親戚などに農地を貸すとなると、賃貸借ではなく使用貸借という方法で貸し借りを行う方がほとんどでしょう。

農地の貸し借りに関しては、「農地法」が基本のルールとなります。
ただし、農地法全ての項目が使用貸借に対して制限があるわけではありません。
双方で認識のズレが生じないために、事前に費用や補償、返還などのルールを確認しておきましょう。

畑を無償で貸す場合のポイントについてお伝えします。

農地の使用貸借

農地の使用目的や又貸しについては

農地の使用目的や又貸しについて借主が違反した場合は、貸主は使用貸借を解約することが認められています。

農地法では、「借主は、農地を契約内容に添った使い方をしなければならない」、「貸主の承諾がない限り農地の転貸はできない」と定められています。

また、これに違反した場合は、貸主は解約することが可能です。

よって、借主は勝手に畑を別の用途で使用したり、他の人に又貸しすることはできません。
貸主は、自分の土地が勝手に別の用途で使われる心配はしなくて済むでしょう。
もしも、借りている農地を他の人に貸したいという場合は、貸主に承諾を得る必要があります。

使用貸借はあくまでも「土地を借りている」状態になります。

これまで、契約書の大切さも一緒にお伝えしましたが、農地の場合も同じです。契約書がないことで勝手に別の目的に大事な土地を使われてしまう可能性もゼロではありません。

農地の使用目的や又貸しに関するポイントも抑えておきましょう。

農地の管理維持にかかる費用

管理維持費に関する項目も農地法に定められています。
使用貸借で借りている農地の管理・維持に関する費用は、基本的に借主が負担することになります。
自分の農地を無償で貸し出す形にはなりますが、管理維持費用も任せることが可能なため、メリットを感じる地主の方も多いでしょう。

貸主は、使用貸借をしている間に限り、畑の管理費用を借主に一任できます。

一方で、借主は畑に関する管理費用を負担しなければならないということを理解しておきましょう。無償で畑を貸してもらえたとしても、その後の管理は自己負担となります。

畑の面積が広いほど、管理維持にかかる費用も大きくなるでしょう。
契約後にトラブルとならないためにも、費用に関することは双方で確認しておくことが大事です。

農地に欠陥があった場合の補償

貸した農地に何かしらの欠陥があったとしても、貸主に責任はありません。
農地法により「無償の貸し借りでは、農地に欠陥があったとしても貸主の責任はない」と定められています。

使用貸借は土地を無料で貸し借りする方法になりますので、借主に貸す畑に欠陥があった時の補償は貸主に問われることはありません。

農地にある欠陥によって、人が怪我をしたり土地内に損害が出た場合、補償責任は借主が問われることになります。畑を無料で貸した後に、借主の報告を受けたとしても、責任は貸主にありません。事前に、農地の欠陥に関する補償についても双方で確認しておきましょう。

また、借主の負担を少しでも軽減できるように、一緒に土地の状況を確認しておくという作業も行うと良いでしょう。

農地の返還時期は

貸主は借主に対して、いつでも農地の返還を要求できます。

農地を無償で貸し借りする際は、期限を定める場合もあれば、特に期限を定めない場合もあるでしょう。

農地法に、返還の時期に関する項目があります。

「農地を借りる目的について双方で取り決めが行われなかった場合は、貸主はいつでも返却を請求できる」という内容です。

万が一、農地の貸し借りの契約時に期限を定めていなくても、貸主のタイミングで返還を要求できます。

親子間や昔からの知人同士といった個人の人間関係や信頼関係で成り立つ使用貸借ですので、返還してもらいたいけど遠慮してしまうというケースもあるかもしれません。

あるいは、借主に返還する気配がないというケースもあり、要求すべきタイミングが分からないという方もいるかもしれません。

しかし、使用貸借には借地権という賃貸借の場合に発生する権利は生じません。
よって、借主にはそこまで大きな権利はないです。

貸主・借主双方が、いつでも返還要求が可能であるということを把握しておきましょう。

貸した土地を返してもらうのに許可が必要?

基本的に、借主は貸主の返還の要求を拒否することはできません。

農地法では、賃貸借の解約等の制限をしていますが、使用貸借については制限が定められていません。

したがって、使用貸借の期間を定めている場合にはその期間満了時に、期間を定めていない場合には使用貸借の目的が達したと認められる時に返還してもらえます。そのため、貸主が返還を要求した時点で、借主は速やかに要求に応じなければなりません。

ただし、双方で契約書にて取り決めが行われていない場合、スムーズに農地の返還に応じてもらえない事態が起きてしまうことも考えられます。どうしても返還に応じないとなると、最終的に法的手段をとることになってしまうこともあるようです。問題が長引くだけでなく、これまでの関係性に亀裂が生じてしまいます。

貸主が返還を要求した時期に、借主は土地を返還しなければならない旨を記しておく必要があるでしょう。

土地の使用貸借ではトラブルが起きがち⁉

農地を含め土地の使用貸借では、貸主と借主の間でトラブルが起きてしまうことも少なくありません。例えば、貸主は貸していると認識していた土地を借主は借りている土地という認識を持っていない場合があります。

なかには、返還して欲しい時に貸主が返還に応じない、立ち退き拒否という事態が起こることもあるようです。また、課税に関する項目も双方が理解しておらず、トラブルの元となることもよくある事案です。

無償だからなんでもいいというわけではなく、ルールが決まっていますので、お互いに理解しておかなければなりません。

親子間や知人間など信頼関係があるからこそ行われた無償での土地の貸し借りが成立するのですが、認識のズレがあることでトラブルになります。問題が大きくなるほど、関係性にも影響が及ぶものです。

土地の使用貸借は、やはり口頭の約束ではなく、書面上で取り決めを行うことが大事です。

※土地の使用貸借で起こりがちなトラブルについては以下の事例も合わせてご覧ください
【立ち退き拒否!?】使用貸借トラブル解決法と9事例|弁護士監修

親子、知人でも無償で土地を貸す場合は「取り決め」をしましょう

土地の貸し借りを無償で行う「土地の使用貸借」は、親子や親戚、知人同士といった信頼関係がある仲で行われることが多いです。信頼関係がある間柄であるとはいっても、使用貸借を行う場合にも契約書を作成することが大事です。

万が一、契約書を作成せずに土地を無償で貸し借りしてしまうと、後々あらゆる面でトラブルが発生してしまう可能性があります。

土地は大事な財産の一つですので、親子や知人でも口約束ではなく双方が確認し合える形で取り決めをしましょう。

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