【ニュース解説】「不動産小口化商品」市場が急伸中!|相続対策はいたちごっご

相続税の財産評価をめぐり新しい節税対策が編み出されていますが、長年国税庁との間でいたちごっこが繰り返されています。近頃は高額な都心オフィスビルなどを細分化し共同で所有する「不動産小口化商品」市場が、相続税の節税スキームとして急伸中です。

節税効果が期待できるとはいえ、リスクは全くないと言えるのでしょうか。本コラムでは「不動産小口化商品」が相続対策として注目される理由やスキーム、リスクの有無について解説していきます。

相続税の節税対策として注目の「ニュース解説」です。ぜひ最後までご覧ください。

不動産小口化商品が急伸中!

「不動産小口化商品」市場が急伸中!

新たな節税スキームとして話題となっている「不動産小口化商品」は、都心部を中心にあらゆる場所で見受けられます。
例えば、東京・豊洲の商業ビル「セレサージュ豊洲」は株式会社コスモイニシアが展開する不動産小口化商品のひとつです。豊洲エリアは再開発により子育て世代が増え、セレサージュ豊洲内にも学習塾や歯科医院などのテナントが埋まっています。

セレサージュ豊洲を所有する任意組合への出資は1口5,500万円で2口からとなっており、相続節税を目的としている高齢者が多いようです。出資者の1人である神奈川県在住の70代男性は「マンション1戸よりも少額から投資ができ、2人の子どもに相続がしやすい」という理由で4,000万円を投じています。

国土交通省や東京国税局の調査によると、過去にも不動産小口化商品が急激に伸びた時期があります。それは相続税制改正で基礎控除額が縮小された2015年です。この年の相続税制改正によって、基礎控除額が40%削減と大幅に縮小されることになりました。この影響で、例えば法定相続人が3人の場合、基礎控除額が8,000万円から4,800万円となります。

2015年以降、相続税の課税対象となる人の割合が増加しています。これに伴い、不動産小口化商品の累計募集額も年々上昇しており、相続税の節税としてのニーズが高まっていることは明らかでしょう。

不動産小口化商品とは?

不動産小口化商品とは?
不動産小口化商品とは、国交省大臣あるいは都道府県都知事の許可を得た事業者のみが扱うことを可能とする不動産特定共同事業法という法律に基づいた商品です。

仕組みとしては、ある特定の不動産を1口100万円というように小口化して投資家に販売し、その物件から得られた賃料収入や収益などを所有小口数によって出資者へ分配します。高額不動産を手軽に所有できることや、相続税対策として活用できることから、節税スキームとしても最近注目が高まっています。

不動産小口化商品の契約形態は、大きく分けて以下3種類です。

  • 「任意組合型」
  • 「匿名組合型」
  • 「賃貸型」

任意組合型と匿名組合型が一般的に販売されている主流ですが、相続税や贈与税の節税効果が高い種類は任意組合型となっています。不動産を一部所有するものの、管理や運営に関しては不動産特定共同事業者が行います。

背景には相続税課税強化の動き

国税庁との相続節税いたちごっこが起こる背景には、相続税課税強化の動きが関係しています。
これまでも何度も改正を繰り返してきた相続税制ですが、主に経済再生を目的として、2015年1月1日から基礎控除額の改正が施行されました。

税制改正前は、基礎控除額は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の人数」で算出されていました。改正後は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」に変化しています。

これにより、基礎控除額は改正前と比較して40%削減と大幅に縮小されることとなりました。つまり、法定相続人が3人とした場合、改正前は8,000万円まで非課税であったのに対し、改正後は4,800万円と非課税分が減額(実質の増税)となってしまいました。

相続税課税強化によって生じた影響は、相続税の納税対象者の増加と支払う相続税額の増加が挙げられます。遺産総額が基礎控除よりも少ない場合は、相続税の納付義務はなく、相続税の申告も不要です。

しかし、改正によって基礎控除額が引き下げられたことにより、相続税の納税対象者が増加しています。国税庁の「相続税の申告事績の概要」によると、「相続税課税対象者割合」が平成26年と平成27年では約2倍増加しました。ここまで急激に増加するまでは4.1%から4.4%と横這いでしたが、平成27年の課税割合は8.0%へと増加し、令和に入ってもなお8.0%以上をキープしています。

◆参考資料
令和令和元年分相続申告事績の概要(国税庁)

基礎控除額が減額したことにより、課税対象となる金額も増加しました。改正前後で、相続財産に適用できる基礎控除「2,000万円+400万円×相続人の人数」分の差が生じています。

仮に相続財産が6000万円で法定相続人が1人とした場合、改正前は「課税なし」。改正後の課税遺産総額は2,400万円になります。以前の税制であれば相続税が発生せず申告も不要であったケースも、現在の税制では課税対象となるケースも発生しており大きな影響が生じるのです。

なぜ相続節税できるのか?~不動産小口化商品を利用した相続節税のスキーム

なぜ相続節税できるのか?
次に不動産小口化商品のメリットについて、不動産投資の側面と節税効果の側面から解説していきます。

一般的に不動産投資する場合、数千万円あるいは数億円というような高額の資金が必要となりますが、不動産小口化商品の場合は1口100万円程度から不動産投資が可能です。例えば、10億円の不動産を1,000口で募集した場合、1口100万円から出資が可能となります。

不動産小口化商品で販売されている物件の多くは、都心のオフィスビルのような利便性が良く、好立地で高額な優良物件です。通常であれば、単独での購入が困難な物件を、小口化することで所有できるのが最大の魅力です。

立地条件や利便性の高さから人気が高く、賃貸収入の安定した収益も期待できるでしょう。さらに運営や管理の大半を不動産特定共同事業者に任せることができるため、時間や費用面から見ても不動産運用のハードルも低くなります。

一般的な不動産投資において、対象不動産の管理やメンテナンスは欠かせません。こうした面からも、不動産投資を検討している方にとってメリットが多いといえるでしょう。

ひとつの不動産を複数人で共有所有するという形になるため、相続の際は直接所有している場合と同じ不動産の評価方法が用いられます。路線価に基づく相続税評価額は不動産の時価(実勢価)よりも低く評価されるため、相続税の節税効果が出てきます。つまり、現金で相続するよりも節税対策効果が高いのです。

例えば遺産額が1億円の場合、遺産がすべて現金であれば、相続税評価額が1億円となります。不動産の場合は相続税評価額が1億円よりも相続評価額が低くなり、課税対象となる金額が大きく変わります。

小規模宅地などの特例や貸家建付地評価などの適用も可能であるため、さらに相続財産の圧縮効果を得ることも可能です。不動産小口化商品のような投資不動産は、貸付事業用宅地等に該当します。
貸付事業用宅地等は200㎡まで評価額が50%減額されるため、相続財産が圧縮され節税効果が高くなります。

贈与の際にも相続時と同様に不動産の評価減が実施されるため、生前贈与にも節税効果を発揮します。贈与税は年間110万円の基礎控除があり、贈与額は基礎控除額を引いた金額に対して課税されます。現金1,000万円を2人の子どもに生前贈与する場合、それぞれ500万円が贈与されることとなり、1人あたり50万円程度の贈与税が課税されるというわけです。

不動産小口化商品の場合は、評価額分が控除されるため現金の贈与に比べて大幅に課税負担が少なくなります。仮に1,000万円の不動産を小口化商品とし、その評価額が150万円とすると、1人あたりの贈与額は4万円程度となり、現金のケースと比較すると明らかに課税負担が異なります。

以上、資産を現金から不動産へ移すことは節税対策としてよく用いられる手段です。不動産小口化商品によって、資産価値が落ちにくい都心一等地の不動産を1口100万円程度から出資が可能になりました。相続や贈与の際には直接所有と同じように不動産の評価額が用いられるため、資産を現金で相続や贈与するよりも高い節税効果が得られます。貸付アパートなどに適用となる「貸付事業用宅地等」とみなされた場合は、課税負担はさらに軽減されるのです。

不動産小口化商品にリスクはないのか?

相続税対策としてもメリットがある一方で、不動産小口化商品はいくつかリスクも存在します。
代表的なリスクとして、不動産価値の値下がりリスクや事業所の倒産リスク、換金自由度の低さがあげられます。不動産小口化商品によって不動産を一部所有していることになるため、やはり不動産価値の値下がりに関するリスクは想定しておかなければなりません。エリア全体の需要が下がり、人口減少が進行する地域は、特に不動産価値が値下がりする傾向にあります。少子高齢化社会が進むなかで、値下がりしにくいエリアの選定が重要なポイントです。

しかし、不動産小口化商品の対象となる物件の多くは、都心のオフィスビルのような良好な立地条件を有する優良物件です。地方のアパートのような、他の不動産投資と比較すると値下がりリスクは低いといえるでしょう。

また、不動産小口化商品は他の不動産投資と違って、管理運営を不動産特定共同事業者に委ねることになるため、事業所の倒産もリスクの一つです。運営や管理に関する負担は軽減されるというメリットはありますが、事業者の経営状況によっては倒産のリスクも想定されます。仮に事業所が倒産するような事態になった場合、所有する不動産の途中売却あるいは運用している事業者が途中で交代する可能性もあります。

しかし、不動産小口化商品を扱う事業所は、国交省が定める要件をクリアしており信用度は高く、事業所の多くは東証1部上場企業であり不動産の担保価値が高いと言えるでしょう。信用度の高い事業所を選定することで倒産によるリスクを回避できます。

他にも不動産小口化商品は換金自由度が低いこともリスクとしてあげられます。事業者が市場の動向を見て売却しますので、不動産を単独で所有しているケースと比べると自由度(流動性)は低く、個人投資家の意思が反映されにくいという面がデメリットと感じる方もいるでしょう。

不動産小口化商品は第三者への譲渡が可能です。人気が高い商品であれば買い手を見つける苦労は少ないかもしれませんが、人気が低い商品を譲渡する場合はなかなか買い手が見つからないというリスクもあることに注意が必要です。

【ワンポイント解説】購入価格に比べて相続税評価額が低い

購入価格に比べて相続税評価額が低い
ここで、相続財産の圧縮効果について簡単に解説していきます。

不動産を取得することで相続税節税の効果があると言われる理由は、不動産の相続税評価額は時価と比べて低く評価されることにより、相続税が少なく算出されるからです。

不動産を評価する際には、土地と建物に分けて各々の算出方法で評価を行います。土地の評価を求める際に用いる相続税路線価は実勢価格の80%を目安に算出されており、建物の評価を求める際に用いる固定資産評価額は実勢価格の70%となります。

相続評価額が低くなることで相続税を引き下げられ、一般的な不動産投資と同様に相続税節税の効果が得られるのです。

【事例紹介】
事例紹介
東京都内の区分所有オフィスの事例を紹介します。図解の通り、現金のままでは評価に変化はありませんが、不動産として所有することで評価額が変わり、節税効果の大きさがわかると思います。

事例では、販売価格約10億円(土地:6億円/建物:4億円)の不動産が2億5千万円(土地評価額:2億円/建物評価額:5千万円)まで圧縮されています(75%の圧縮率)。

相続節税いたちごっこ〜国税はどう見る?

相続節税としても効果がある不動産小口化商品は、近年ニーズも高まり多数の不動産会社が商品を販売しています。基礎控除改正が行われた2015年以降、相続税課税対象者や金額が増加したことにより、新たな節税スキームとして注目が集まっています。

ある国税幹部は個別のケースを検討してみないと、税務上問題に該当するかはわからないとしており、不動産小口化商品に対して注視している模様です。節税スキームに関する規制は国税庁の裁量によるという一面もあります。

不動産小口化商品においても相続税申告が「著しく不適当」とみなされた場合は、国税庁が再評価し追徴課税を課せられるケースも出てくるかもしれません。注目が集まっている不動産小口化商品に対して、国税庁がどのように扱うのかは今後も要注目です。

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