【2020年9月追記】法務局で自筆証書遺言の保管が可能に

円満な相続実現のため、遺言の作成を検討する人もいるでしょう。遺言には3つの形式がありますが、なかでも「自筆証書遺言」はひとりでも作成できるという手軽さが魅力です。一方で、作成された自筆証書遺言は自宅で保管されることが多く、「肝心の遺言書を相続時に発見してもらえない」など管理上のリスクを抱えていました。
高齢化が進むなか、スムーズな相続の助けとなる遺言書への期待はますます高まっています。そこで、自筆証書遺言をより利用しやすくするため、自筆証書遺言を法務局で保管できる制度が2020年7月10日から開始しました。今回は、この新制度について詳しくご紹介します。

遺言書

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自筆証書遺言を自分で保管するリスクとは

自筆証書遺言で思い描いた通りの遺産分割を成し遂げるのは、決して簡単とは言えないことをご存知でしょうか。その理由は、自筆証書遺言の保管・管理の難しさにあります。

せっかく書いた遺言を誰にも見つけてもらえないかも

自筆証書遺言は、その内容はもちろん、遺言を作成したという事実そのものも完全に秘密にしておけます。それゆえ、遺言を作成したことを伝えておかなければ、家族は自筆証書遺言の存在に気づかず、相続開始時に遺言書を見つけてもらえない可能性があるのです。また、遺言書を厳重に隠しすぎても、発見されない危険があります。

改ざん・隠ぺいのおそれも

遺言書を確実に発見してもらうには、わかりやすい場所に保管する、遺言のありかまで伝えておく、などの方法があるでしょう。

しかし、これらの場合、相続開始前に開封されてしまう可能性があります。また、遺言で不利な扱いを受けると知った相続人に、遺言を改ざんされてしまったり、遺言書が隠ぺいされてしまったりするかもしれません。残念なことですが、時に、自筆証書遺言の真偽をめぐって争いに発展するケースもあるのです。スムーズな遺産分割を願って作成した遺言書でトラブルを招いてしまっては、元も子もありません。

自筆証書遺言をしかるべき時まで安全に保管し続け、スムーズな遺産分割を成し遂げるのは、意外に難しいのです。

法務局に預ければ自筆証書遺言がより確実なものに!新制度のメリットとポイント3つ

自筆証書遺言の最大の弱点ともいえる保管上の問題を解決してくれる今回の新制度。そのメリットは以下の通りです。

  • 遺言書を改ざん・隠蔽されるリスクがなくなる
  • 遺言書が発見されやすくなる
  • 遺言書の検認が不要なのでスムーズに遺産分割協議が進められる

では、ポイントを具体的に見ていきましょう。
保管

その1:自筆証書遺言の原本と画像データを法務局で確実に保管してくれる

自筆証書遺言を法務局に持参すると、遺言書の原本とデータ化した画像を死後50年間にわたって保管してくれます。手続きを行えるのは遺言書保管所として法務大臣が指定する全国300箇所以上の法務局で、「遺言をのこそうとする人の住所地」、「本籍地」、または「所有する不動産の所在地」を管轄するものの中ならどこでも構いません。

法務局で保管されている遺言は、遺言をのこした本人が希望すればいつでも内容を確認でき、撤回や変更が可能です。また、相続が開始するまで遺言を作成した本人以外は遺言に関する一切の情報を得られません。したがって、生前に遺言の内容を相続人に知られてしまう心配はなく、従来通り遺言書の存在を秘密にしておくこともできます。

その2:相続開始後、故人が自筆証書遺言をのこしていたかどうかを簡単に調べられる

相続発生後は、相続人や遺言の執行人など相続に関係ある立場の人であれば、法務局で故人が自筆証書遺言を作成していたかどうかを確認できます。遺言書が保管されているとわかった場合、遺言書の写しの交付を受ける、遺言書の原本を閲覧する、などの方法ですみやかに内容を確認できます。

なお、相続人の1人が上記の手続きを請求すると、他の相続人らに対して「 故人が遺言書を作成しており、法務局に保管されている」という情報が通知されます

「遺言に気づいてもらえない」を防ぐための画期的な通知制度も導入!

上記の通知制度は、相続人が遺言書を閲覧する、などのアプローチを行わない限り機能しません。相続人が、法務局まで出向いて遺言が保管されていないか確かめない限り、やはり、遺言をのこしていたことに死後、気づいてもらえない可能性があるのです。

そこで法務局は、遺言書が保管されていることを通知する「死亡時の通知」というサービスも設けました。これは、法務局の遺言書保管官が遺言者がなくなったことを知ったとき、遺言者が予め指定した人(1人)に対して、遺言書が保管されている旨を通知するというものです。「死亡時の通知」は遺言を預ける人が利用する・しないを選択できますが、自筆証書遺言の発見をより確実にするためには利用しておくと安心です。

「死亡時の通知」は、令和3年頃の運用開始が予定されており、詳細の発表が待たれます。

その3:遺言書の検認手続きが不要!遺産分割協議や各種手続きをスムーズに開始できる

法務局で自筆証書遺言を預かってもらう場合、検認手続きをせずに遺産分割協議を開始でき、登記や各種名義変更等の手続きを進めることもできます。実は、これは非常に大きなメリットです。

「検認」とは遺言書を開封する前に家庭裁判所に届け出て、中身を改めてもらうこと。法務局以外で保管された自筆証書遺言を発見した家族は、検認を受けなければ遺言書の内容を確認できません。検認には故人と相続人それぞれの戸籍謄本が必要で、長ければ2ヶ月程度の期間を要します。

人によっては相続放棄や、準確定申告、相続税の申告納税などの手続きが必要となりますが、これらには期限があります。余裕を持って手続きを済ませるためにも、遺言書の内容はぜひとも早めに確認しておきたいものです。

知らないと危険!遺言保管制度の意外な落とし穴・デメリットとは

一方、自筆証書遺言の保管制度を利用したからといって「確実に遺言が発見されて実行される」とは限りません。

「死後、自筆証書遺言が発見されなかった」となるリスクはゼロではない

「死亡時の通知」を利用すれば、遺言をのこす人が指定した人に、法務局で遺言書が保管されている旨が通知されます。しかし、通知は郵送で行われるため、通知を受ける人が転居してしまったら、確実に通知を受け取れるという保証はありません。また、通知を受け取る人の方が先に亡くなるケースもあるでしょう。保管制度を利用しても依然として「遺言書が日の目をみなかった」という危険はあるのです。

遺言書の内容が適正であるかはチェックしてもらえない

次項で詳しくご説明しますが、法務局に遺言を預ける際には、所定の様式を満たしているかを確認されます。したがって「法務局のチェックを受けたら遺言書として有効だろう」と考えたくなるところですが、それは早計です。確認されるのはあくまでも形式面であり、遺言書保管官は、遺言の内容にまでは関与しないからです。

例えば、「どの財産を」「誰に与えるのか」を明示していない遺言書であれば、様式を満たして法務局で保管されていたとしても、遺産分割には使えないでしょう。遺言書保管サービスを利用するにしても、有効な自筆証書遺言を作成するには、やはり、ご自身でのしっかりとした準備が必要なのです。

自筆証書遺言作成については新ルールも!法務局で遺言書を保管してもらうための手続きは?

法務局

自筆証書遺言を法務局で預かってもらうためには、所定の手続きを行う必要があります。

ステップ1:様式を満たした自筆証書遺言を作成する

法務局で保管してもらう自筆証書遺言を作成します。自筆証書遺言としての形式を満たすため、通常の場合と同じく「全文を自分で書く(財産目録をのぞく)「作成年月日を記す」「署名捺印をする」ことが必要です。また、作成した自筆証書遺言には封をしません

通常の自筆証書遺言よりもより細かい様式が設定されていることに注意

遺言保管サービスを利用するために作成する遺言では、通常の自筆証書遺言よりもより詳細な様式が設定されています。具体的には、以下の点です。

用紙のサイズはA4
文字の判読をさまたげるような色・柄がついた用紙はNG
・筆記用具は長期保存にたえうるように「ボールペン等」
・ページの上下左右に確保すべき余白についても細かく定めがある

作成にあたっては、法務省のこちらのページからご確認ください。なお、様式をみたしていれば、保管制度が開始する前に作成した遺言でも預かってもらえます。

ステップ2:法務局に本人が出向いて、遺言書の保管申請を行う

遺言をのこそうとする人は、作成した自筆証書遺言を持って法務局を訪れ本人確認を受け、申請書と添付の書類を提出します。本人が出頭する必要があり、代理での提出は認められません。提出された遺言書は、自筆証書遺言としての形式を満たしているかどうかを確認されたのち、原本とデータ化された画像が保存されます。

手続きには事前の予約も必要

なお、保管の申請にはあらかじめ予約が必要です。全国の法務局一覧から遺言を預けるところを決め、予約をしてから出向きましょう。予約は、電話のほか、専用ウェブサイトから24時間オンラインでも行えます。

遺言保管にかかる手数料は一律3,900円

遺言の保管にかかる手数料は、財産の多い・少ないや保管年数に関わりなく、1通につき3,900円です。申請時に支払うのではなく、あらかじめ収入印紙を購入し、手数料納付用紙に貼り付けます。

参考リンク

申請書の書式添付書類一覧(法務省ウェブサイト)

ステップ3:保管証を受け取る

手続きが終われば、遺言者の名前や生年月日、遺言保管所の名称や保管番号が記載された保管証が発行されます。保管証は、遺言書の閲覧や、遺言の変更に使用します。また、家族に遺言書を預けていることを伝える際にも役立ちますので、手元で保管しましょう。

自筆証書遺言の預かりサービスを利用して相続トラブルを防止しよう

これまで安全性の高い手段としては公正証書遺言がポピュラーでしたが、今回の制度改正により、自筆証書遺言の利用も増えることが期待されます。

新制度を利用するには本人が法務局に出向かなければならないという若干のデメリットがあります。しかし、その手間1つで自筆証書遺言が格段に安心できるものになると思えば、利用価値は高いといえるでしょう。さらに、公正証書遺言のように証人を用意する必要もなく、あくまで自分1人ですべての手続きを進められるのも魅力です。

遺言の作成を検討中の方は、より利用しやすくなった自筆証書遺言で円満な相続対策を始めてみてはいかがでしょうか。

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