2020年7月開始!法務局で自筆証書遺言の保管が可能に

2020.01.14

円満な相続実現のため、遺言の作成を検討する人もいるでしょう。遺言には3つの形式がありますが、なかでも「自筆証書遺言」はひとりでも作成できるという手軽さが魅力です。一方で、作成された自筆証書遺言は自宅で保管されることが多く、「肝心の遺言書を相続時に発見してもらえない」など管理上のリスクを抱えていました。
高齢化が進むなか、スムーズな相続の助けとなる遺言書への期待はますます高まっています。そこで、自筆証書遺言をより利用しやすくするため、自筆証書遺言を法務局で保管できる制度が2020年7月10日から開始します。今回は、この新制度について詳しくご紹介します。

遺言書

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自筆証書遺言を自分で保管するリスクとは

自筆証書遺言で思い描いた通りの遺産分割を成し遂げるのは、決して簡単とは言えないことをご存知でしょうか。その理由は、自筆証書遺言の保管・管理の難しさにあります。

せっかく書いた遺言を誰にも見つけてもらえないかも

自筆証書遺言は、その内容はもちろん、遺言を作成したという事実そのものも完全に秘密にしておけます。それゆえ、遺言を作成したことを伝えておかなければ、家族は自筆証書遺言の存在に気づかず、相続開始時に遺言書を見つけてもらえない可能性があるのです。また、遺言書を厳重に隠しすぎても、発見されない危険があります。

改ざん・隠ぺいのおそれも

遺言書を確実に発見してもらうには、わかりやすい場所に保管する、遺言のありかまで伝えておく、などの方法があるでしょう。

しかし、これらの場合、相続開始前に開封されてしまう可能性があります。また、遺言で不利な扱いを受けると知った相続人に、遺言を改ざんされてしまったり、遺言書が隠ぺいされてしまったりするかもしれません。残念なことですが、時に、自筆証書遺言の真偽をめぐって争いに発展するケースもあるのです。スムーズな遺産分割を願って作成した遺言書でトラブルを招いてしまっては、元も子もありません。

自筆証書遺言をしかるべき時まで安全に保管し続け、スムーズな遺産分割を成し遂げるのは、意外に難しいのです。

法務局に預ければ自筆証書遺言がより確実なものに!新制度のメリットとポイント3つ

自筆証書遺言の最大の弱点ともいえる保管上の問題を解決してくれる今回の新制度。そのメリットは以下の通りです。

  • 遺言書を改ざん・隠蔽されるリスクがなくなる
  • 遺言書が発見されやすくなる
  • 遺言書の検認が不要なのでスムーズに遺産分割協議が進められる

では、ポイントを具体的に見ていきましょう。
保管

その1:自筆証書遺言の原本と画像データを法務局で確実に保管してくれる

自筆証書遺言を法務局に持参すると、遺言書の原本とデータ化した画像を死後50年間にわたって保管してくれます。手続きを行えるのは遺言書保管所として法務大臣が指定する全国300箇所以上の法務局で、「遺言をのこそうとする人の住所地」、「本籍地」、または「所有する不動産の所在地」を管轄するものの中ならどこでも構いません。

法務局で保管されている遺言は、遺言をのこした本人が希望すればいつでも内容を確認でき、撤回や変更が可能です。また、相続が開始するまで遺言を作成した本人以外は遺言に関する一切の情報を得られません。したがって、生前に遺言の内容を相続人に知られてしまう心配はなく、従来通り遺言書の存在を秘密にしておくこともできます。

その2:相続開始後、故人が自筆証書遺言をのこしていたかどうかを簡単に調べられる

相続発生後は、相続人や遺言の執行人など相続に関係ある立場の人であれば、法務局で故人が自筆証書遺言を作成していたかどうかを確認できます。遺言書が保管されているとわかった場合、遺言書の写しの交付を受ける、遺言書の原本を閲覧する、などの方法ですみやかに内容を確認できます。

なお、相続人の1人が上記の手続きを請求すると、他の相続人らに対して「 故人が遺言書を作成しており、法務局に保管されている」という情報が通知されます

その3:遺言書の検認手続きが不要!遺産分割協議や各種手続きをスムーズに開始できる

法務局で自筆証書遺言を預かってもらう場合、検認手続きをせずに遺産分割協議を開始でき、登記や各種名義変更等の手続きを進めることもできます。実は、これは非常に大きなメリットです。

「検認」とは遺言書を開封する前に家庭裁判所に届け出て、中身を改めてもらうこと。法務局以外で保管された自筆証書遺言を発見した家族は、検認を受けなければ遺言書の内容を確認できません。検認には故人と相続人それぞれの戸籍謄本が必要で、長ければ2ヶ月程度の期間を要します。

人によっては相続放棄や、準確定申告、相続税の申告納税などの手続きが必要となりますが、これらには期限があります。余裕を持って手続きを済ませるためにも、遺言書の内容はぜひとも早めに確認しておきたいものです。

自筆証書遺言作成については新ルールも!法務局で遺言書を保管してもらうための手続きは?

法務局

自筆証書遺言を法務局で預かってもらうためには、所定の手続きを行う必要があります。

ステップ1:様式を満たした自筆証書遺言を作成する

法務局で保管してもらう自筆証書遺言を作成します。自筆証書遺言としての形式を満たすため、通常の場合と同じく「全文を自分で書く(財産目録をのぞく)「作成年月日を記す」「署名捺印をする」ことが必要です。

注意すべきポイントは、用紙の大きさなどの様式が法務省令で規定されていること。具体的な様式については2020年1月現在、まだ明らかになっていませんが、施行日までに発表される見込みです。また、作成した自筆証書遺言には封をしません

ステップ2:法務局に本人が出向いて、遺言書の保管申請を行う

遺言をのこそうとする人は、作成した自筆証書遺言を持って法務局を訪れ本人確認を受け、申請書と添付の書類を提出します。本人が出頭する必要があり、代理での提出は認められません。提出された遺言書は、自筆証書遺言としての形式を満たしているかどうかを確認されたのち、原本とデータ化された画像が保存されます。

自筆証書遺言の預かりサービスを利用して相続トラブルを防止しよう

これまで安全性の高い手段としては公正証書遺言がポピュラーでしたが、今回の制度改正により、自筆証書遺言の利用も増えることが期待されます。

新制度を利用するには本人が法務局に出向かなければならないという若干のデメリットがあります。しかし、その手間1つで自筆証書遺言が格段に安心できるものになると思えば、利用価値は高いといえるでしょう。さらに、公正証書遺言のように証人を用意する必要もなく、あくまで自分1人ですべての手続きを進められるのも魅力です。

なお、遺言書の保管や、相続人が遺言書を閲覧するには所定の手数料がかかります。手数料の具体的な額は今後の情報が待たれますが、新制度が設立された趣旨を考えると、それほど高額になることはないと思われます。

遺言の作成を検討中の方は、より利用しやすくなった自筆証書遺言で円満な相続対策を始めてみてはいかがでしょうか。

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