底地の相続税評価の計算方法|相続と贈与どっちがお得?

借地権負担付きの土地である「底地」。

被相続人が亡くなると底地を相続することになりますが、贈与という方法もあります。
しかし、相続または贈与、どちらの方法を選択したとしても税金がかかりますので、課税の負担が気になるところです。

実際に、「親から底地を相続することになりそうだけど、贈与とどちらが損をしないのだろうか」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

今回は、底地の相続税評価の計算方法から相続と贈与の費用負担の違いについてご紹介します。

※底地の基礎知識については以下のページをご覧ください
底地とは

底地(借地権負担付きの土地)の相続税評価額の計算方法・計算例

底地を相続する場合は、借地権負担付きの土地がどのくらいの価値であるのか調査が必要です。

税法上や国税庁の通達に従って算出した土地の価額を「相続税評価額」と言い、相続税額を導き出す際の基準となります。

こちらでは、底地の相続税評価額の計算方法や計算例についてご紹介します。

相続税と贈与税

底地は相続税の課税対象になる

底地は税法上、現金と同じ価値を持つ「資産」として扱います。

よって、地主である被相続人が亡くなった場合、底地は相続財産となるため、相続税の課税対象となるのです。

相続税額は、相続税評価額によって大きく変わってきます。底地の相続税評価額を算出する計算式は、次の通りです。

(1)「底地の相続税評価額=自用地評価額×(1−借地権割合)」

土地全体を1とし、そこから借地権割を引くことで底地割合が求められ、さらに自用地評価額を乗じます。

(1)の計算式に設例を当てはめてみましょう。

  • 1平方メートルあたりの路線価が30万円
  • 借地権割合が60%
  • 土地面積が100平方メートル

この設例では、底地の相続税評価額は1,200万円になります。
30万円×100㎡(100%−60%)=1,200万円

つまり、この設例の場合は、1,200万円の価値がある土地を相続することになり、この数字を基に相続税を算出します。

自用地評価額とは

底地の相続税評価額の計算で必要な「自用地評価額」とは、自用地つまり借地権の負担がない土地の相続税評価額を意味しています。

自用地評価額を算出する方法は、路線(道路)に面している宅地の1平方メートルあたりの評価額である「路線価」に、土地面積を掛け、奥行きや角地などの補正率をさらに乗じます。

路線価は、国税庁が毎年公表している「路線価図」から調べることができ、土地の評価額や借地権割合を確認することが可能です。

※参考「国税庁・東京都の路線価図

東京都昭島市朝日町の路線価図

※国税庁:東京都昭島市朝日町の路線価図

一見難しそうに感じるかもしれませんが、都道府県や市町村など該当箇所を選択していくと、調査したい土地の路線価図が表示されます。

路線価図の地図上に「160D」などの数字とアルファベットが記載されています。

この数字とアルファベットが路線価と借地権割合です。
路線価は千円単位の数字で、借地権割合はアルファベットでA(90%)からG(30%)までの7区分(各10%間隔)で設定されています。

(A90%・B80%・C70%・D60%・E50%・F40%・G30%)

よって、「160D」の場合は、1平方メートルあたり16万円で、借地権割合は60%です。

この路線価は、毎年1月1日時点の評価額で、毎年7月1日に発表されます。
その年によって変化しますので、国税庁の路線価図を確認しておきましょう。

借地権のついた底地の評価額は低くなる

底地と更地の相続税評価額を比較した場合、底地の評価額の方が低くなります。これは、借地権割合が相続税評価額に大きく影響するためです。

底地は、借地権の負担が付いている土地であるため、借地権割合を基に相続税評価額を算出します。

借地権割合が大きいほど、相続税評価額が低くなるという仕組みです。

一方、更地は土地に関する権利が付帯していない土地を意味しますので、借地権割合を考える必要がありません。

つまり、自用地評価額がそのまま更地価格になるのです。よって、借地権のついた底地の評価額は借地権割合の分だけ、更地価格より低くなってしまいます。

建物などがない土地であるうえに、借地権が付帯していないことが更地の条件です。誰かに借地として提供した時点で更地とは言えなくなり、その土地に借地権と底地が発生します。

 底地の相続税負担は大きい!(なのに地代収入は低い)

底地は地代収入が低い割に、相続税は高く設定されています。

収益性が低く、重い相続税が課税されると聞くと、相続するメリットが少ないと感じてしまうでしょう。事実、地主にとって底地はデメリットの方が大きいと言えます。

しかも、底地は「借地借家法」が適用される土地の所有権であることから、地主よりも借地人の権限が強いという特徴もあります。

そのため、本来の所有者である地主であっても、借地人の許可無しに土地を自由に扱うことはできません。また、正当な理由がなければ、借地契約の解除も行えないのです。

なかには、売却を検討する場合もあるでしょう。しかし、重い相続税負担に加えて、土地を自由に扱えないとなると、底地の買い手が現れることはほとんどなくなってしまいます。

結果的に、所有したまま固定資産税を払い続けることになります。よって、相続により多額の相続税の支払いに困る地主が多いというのが現状です。

そのため、相続する前に贈与や売却などの方法も含めて、対策を考えておくことが大切になってきます。

底地の贈与税の計算方法は?

底地を贈与する場合にも税金がかかります。底地が資産としての扱いになるため、贈与税を納める義務が発生します。

贈与税を求める計算式は次の通りです。
「贈与税=(底地の相続税評価額−110万円)×贈与税率−税額控除」

贈与する底地の相続税評価額から基礎控除である110万円を引いた金額に対して、贈与税率を乗じます。毎年110万円が基礎控除となります。年間の贈与で110万円以下のものについては課税されません。(※暦年課税制度の場合)

底地の贈与税を算出する際は、相続税の算出と同じく底地の評価額が必要です。

固定資産税評価額または相続税評価額を用いて贈与税を算出することになりますが、底地の場合は小固定資産税評価額ではなく、相続税評価額を使用します。

相続税評価額を求める計算式は、上記でご紹介した「自用地評価額×(1−借地権割合)」です。相続税だけでなく、贈与税においても基準となる計算式になります。

贈与税の算出で必要な贈与税率は、一般税率と特別税率の2つに区分され、受贈者の年齢や贈与者との関係によって判断します。

特別税率
贈与者が祖父母や父母などの直系尊属で、受贈者が20歳以上の子や孫などの直系卑属の場合は特別税率によって贈与税率を計算します。

一般税率
特別税率の要件に該当しない場合は、一般税率を使用します。兄弟間や夫婦間、祖父母や父母から未成年の子・孫への贈与の場合などが一般税率です。

贈与する場合は、贈与者との関係によって用いる税率が変わります。

相続税の税率

※国税庁:贈与税の計算と税率

【例】底地の相続税評価額が1,200万円で一般税率だった場合の相続税
1200万-110万)×45%175万=315.5万

※生前贈与について詳しくは以下の記事もご覧ください
贈与税だけじゃない!意外に高い土地・建物の生前贈与にかかる費用

「相続時精算課税制度」を利用した贈与方法とは?

贈与という形で底地を貰う場合、通常の贈与ではなく「相続時精算課税制度」を利用した贈与という方法もあります。

相続時精算課税制度を利用すると、贈与時に2,500万円まで贈与税が非課税になり、相続時に贈与した財産を含めて相続税が課税されます。

贈与が発生した際に納める贈与税の負担を軽減し、相続時に相続税を納める制度です。そのため贈与税の負担は軽減されますが、決して受け継ぐ資産が非課税になるわけではなく、相続までの繰り延べのようなものとなります。

相続時精算課税制度を利用するにあたって、いくつか留意点が存在します。

2,500万円までは贈与時の贈与額は非課税になりますが、2,500万円を超えた場合は一律20%の贈与税が課税されます。また、制度を利用する場合は基礎控除の110万円は適用外です。

相続時精算課税制度の適用を受けると、暦年課税制度には戻せなくなります。このため将来土地が値下がりしてしまった場合は損をすることも。贈与時の価値に基づいて相続税が課税されるため、価値が下がっていたとしても、高かったころの税率で計算されることになるのです。

控除額だけでなく、土地の状況をみて判断することも大切ですが上手く利用すると節税対策にもなりますのでしっかりチェックしましょう。

上手に節税

 相続と贈与どちらがお得?判断基準は?

贈与税は贈与する土地のみの算出が可能。一方相続税は、土地以外の財産や相続関係なども含めて計算されることになります。贈与税と相続税のどちらが安いかというのは、資産の状況によって変化するため、単純に比較することはできません。

明確に比較ができる部分は「登録免許税」「税率」の違いです。相続でも、贈与でも土地を自分の名義にするためには、登録免許税が必要になりますが、贈与税より相続税の方が安く済みます。また相続と贈与では税率も違ってくるので詳しくみていきましょう。

登録免許税

登録免許税は、相続と贈与どちらの場合も課税されますが、用いる計算式が異なります。

相続する場合は、「土地の登録免許税=固定資産税評価額×0.4%」
贈与する場合は、「土地の登録免許税=固定資産税評価額×2%」

同じ名称ではありますが、相続と贈与それぞれで乗じる数字が変わります。比較すると、贈与の方が高くなります。

贈与税と相続税の税率の違い

相続税の税率

相続税の税率

相続税の基礎控除額の計算式は、3000万+法定相続人の数×600万です。基礎控除を超えた部分に10%~55%の税率で課税されます。

贈与税の税率

贈与税・一般税率・特別税率

贈与税の基礎控除は110万円です。税率は贈与税の計算方法でご紹介した通りになります。

控除分を除いた額面が1000万円以下の場合、相続税の税率は10%なのに対して、贈与税の場合は30~40%です。税率で比較すれば贈与税の方がかなり割高な傾向があります。

贈与は分割が可能

登録免許税と税率で比較すると、贈与の方が高あがりの印象を受けますが、分割できるかそうでないか、という点にも注目してみましょう。

相続税:相続が発生したときに支払う相続税は基本的に1回
贈与税:財産を小分けして、年度を分けながら贈与していくことが可能

贈与税は何回かに分けて贈与することで、1回分の税金を少なくし、負担を下げるという方法をとれるのが特徴です。土地を少しずつ、というのは現実的でないかもしれませんが、土地の整理をお考えなら、知っておいて損はない方法です。

相続税が高くて払えない!となる前の対策を考えておきましょう

底地は、税制上は現金と同じ価値を持つ資産として扱われることになるため、相続税や贈与税が発生することになります。

借地権割合が土地の評価額に影響するため、更地に比べて底地の評価額が低いです。

さらに、相続税が高く設定されているにもかかわらず、収益率は低いという地主にとってデメリットな部分が大きいことも。

相続税が高くて払えないという事態にならないために、今から対策を考えておくことが重要です。

底地を貰うのは相続と贈与のどちらが良いかは、登録免許税や名義変更料などの費用負担、相続時精算課税制度等の税制から総合的に考えましょう。

また、売却し、現金に変えておくのも資産を守る方法の一つとしてあります。

借地人に土地を売却したり、国に物納した後、第三者へ売却されますが、いずれにしても相続前に借地人としっかり話し合うことが大切です。

底地の特徴や所有するメリット・デメリットなども考慮して、どのような形で底地を受け継ぐのか検討してください。

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