地主さんが知っておくべき借地借家法をわかりやすく解説【弁護士監修】

2020.10.26

借地人さんと地主さんとをむすぶ借地契約は、「借地借家法」という法律の適用を受けることをご存知でしょうか。借地借家法は「人に貸している土地」のルールそのものなので、地主さんならぜひとも知っておきたいところです。

ただし、法律の話となると少し難解な印象もあり、実際に借地人さんのいる底地を持っていても、細かいところまではなかなか知らないという人も多いようです。そこで今回は、借地借家法で押さえておくべきポイントや、新法・旧法の違いについて、わかりやすくご紹介します。

借地借家法の基礎知識

借地借家法は、他人の土地に建物を所有する目的で地上権または土地の賃借権を有している借地人の保護と、他人の建物を借りている借家人を保護するための法律です。詳しくは次項で説明しますが、借地借家法は、借地の契約期間や更新についての決まりごと、そしてどんな時に契約が終了するのか、などを定めています。

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民法の「特別法」という位置付け

民法は、土地も含めた物の貸し借りについての基本的なルールを定めていますが、その中で、特別法として存在しているのが「借地借家法」です。借地借家法が適用される契約では民法より借地借家法の内容が優先して適用され、借地借家法に規定がないものは民法が適用されるというのが両者の適用関係です。

では、民法というルールがあるにもかかわらず、特別に「借地借家法」を定めたのはなぜでしょうか。

借地人さんの権利を守るための法律

借地を借りている人に発生している権利は「賃借権」に分類されますが、賃借権は、実はそれほど強い権利ではありません。土地の話となると、借主側の権利が弱いことは大きな問題になり得ます。自宅のある土地の契約を更新してもらえなかったり、ある日突然立ち退きを迫られたりすれば、借主側が大きな不利益をこうむってしまいます。そのため、建物所有目的で土地を借りている側を保護する目的で、建物所有目的の借地についての法律が定められているのです。

借地借家法は「新法」で、「旧法」も存在している

借地借家法は平成4年8月1日に施行されました。それまでは、明治・大正という古い時代に制定された「借地法」「借家法」「建物保護法」という3つの法律でしたが、これらが統合され、時代に即した新たな内容へと変更されたのです。区別するため、平成4年に施行された借地借家法を「新法」、それ以前の借地法を「旧法」と呼んでいます。

平成4年8月1日以降に新しく契約を結んだ借地はすべて「新法」の適用を受けますが、それ以前に結ばれた契約は現在でも旧法適用のままです。そして、現在も存続する借地の多くは、旧法が適用される古い借地なのです。

なお、旧法のもとで結ばれた借地契約を平成4年8月1日以降に更新しても、自動的に新法適用になる、ということはありません。

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借地借家法はどんなことを定めているのか

借地借家法は具体的にどのような内容を定めているのでしょうか。ここでは、借地借家法における借地権(普通借地権)の重要な2つのポイントをご紹介します。
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契約期間について

契約期間は借主と貸主の間の契約で自由に定めるもの、というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、借地借家法の適用を受ける借地では、契約期間に制約があります。土地を借りる人が安定して使用できるよう、必ず、一定の長さ以上の契約期間を設定する必要があるのです。

借地借家法では、借地契約の存続期間は30年以上です。契約を更新した場合は、1回目の更新後は20年以上、2回目以降は10年以上の契約期間が適用されます。最初の契約の時点で30年より短い期間を設定した場合も、自動的に30年が適用されます。

契約の更新について

契約が更新されないということは、土地を借りている人がその土地を出ていくことを意味します。そこで「借地人さんが更新を希望しているのに、更新されない」ということが起こりにくいよう、借地借家法では、地主さん側によほどの理由(「正当事由」と言います)がない限り、更新を拒絶できないように定められています。

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更新しないときの「正当事由」について

正当事由なく更新を拒絶しても、借地契約は存続すると定められており、これを「法定更新」と呼びます。

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新法と旧法はどこが違うの?

借地についての新法と旧法は両者とも、借地人さんの権利を守るための法律であるスタンスに変わりはありませんが、新法は、地主さんにもより配慮した内容となっています。ここでは、新法と旧法との違いで特に大切な3点を取り上げます。

借地権の存続期間

新法と旧法では、借地権の契約期間が異なります。

旧法の場合

建物の造りによって契約期間が異なります。

石造り、レンガ造り、コンクリート造りのような堅固な建物は当初の契約が30年以上更新後も30年の契約が存続すると定められています。ただし、契約を交わした当初に契約期間を定めなかった場合や、30年未満を契約期間として定めた場合は、自動的に「60年」が契約期間になります。

一方、木造やプレハブなどの非堅固な建物の場合は当初の契約期間が20年以上、更新後も20年、契約が存続します。そして、これよりも短い期間を契約時に定めた場合は「30年」が契約期間になります。

新法の場合

契約期間は建物の造りに左右されません。新しく結ぶ契約の場合、契約期間は一律で30年以上、1回目の更新後は20年以上、2回目以降は10年以上、契約が存続します。

新法では、更新のない定期借地権が創設された

借地の契約期間は長いうえ、地主さんが更新を拒絶して立ち退きを求めるための「正当事由」には、非常に厳格な要件が求められます。「一度貸した土地は二度と返ってこない」と言われかねないほどに、旧法は地主さんにとってきびしい内容でした。これでは、土地を貸そうとする地主さんがいなくなってしまいます。

そこで新法では、存続期間が満了した後は契約が終了する「定期借地権」が作られたのです。「一般定期借地権」と「事業用定期借地権」と「建物譲渡特約付借地権」の3タイプがありますがいずれも更新ができず、普通の借地契約とくらべ土地を返してもらいやすい内容になっています。
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更新を拒絶できる「正当事由」が明文化された

旧法では、正当事由について「土地所有者が自ら土地を使用することを必要とする場合その他正当の事由ある場合」という漠然とした内容が記されていたにすぎません。そのため、正当事由が認められるかをめぐって争いになることは珍しくありませんでした。そこで新法では、以下のように正当事由がある程度詳しく定義されています。

第六条 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。

ここで注意したいのは「正当事由と認められる事情が拡大したわけではない」ということです。基本的に「地主が自ら土地・建物を使用する必要がある場合」でなければ正当事由と認められないということに、新法・旧法とも違いはありません。

例えば、条文にある「土地の明け渡しと引き換えに借地権者に対して財産上の給付をする」とはいわゆる「立ち退き料」を支払うことを示していますが、立ち退き料を支払えばそれで更新を拒絶できるというものでもありません。あくまでも、補足要素としての判断要因が増えた、程度に受け止めるのが適切です。

借地借家法の適用を受ける土地ってどんな土地?

借りている側の権利を強く保護する借地借家法ですが、「人に貸している土地」すべてに適用されるわけではありません。あくまでも「建物を建てて所有するため」に借りる契約を結んだ土地に限られます。

一言に「貸している土地」といってもさまざまな種類のものがあり、適用される法律も変わります。例えば、駐車場や畑のような土地であれば借地借家法ではなく、民法の賃借権や農地法の適用を受けます。判断のポイントは「土地を借りる目的」なのです。

また、借地借家法の適用を受けるには、賃料のやりとりも要件の一つとなります。無償で人に使わせている使用貸借の土地は、そこに家を建てていたとしても、借地借家法の適用外となります。

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建物を所有する目的で貸したわけではないのに「借地借家法の適用対象」になってしまうことがある?

借地借家法の適用を受けることで、土地を借りている人の権利は非常に強いものになります。時には、土地を借りている契約が借地借家法の適用対象かをめぐってトラブルになることもありえます。
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例えば、駐車場として土地を貸していたのに、いつの間にか土地の一部に事務所を建設されており、地主さんはそれを見逃してしまっていたとします。

もともとは駐車場であり、「建物所有を目的」として土地を貸したわけではないので、事務所の建設によっってただちに借地借家法が適用されることはありません。ただし、放置しておくことで後に「建物を建てることに地主さんが同意をしていた」と借地人さんに主張されてしまう可能性もあります。その場合、「借地借家法が適用できるのではないか」という点で争いに発展するかもしれません。既成事実の積み重ねを見逃しておくことは非常に危険です。

このような事態を防ぐためには、地主さんは契約書で「建物を所有する目的ではない賃貸借契約であること」を明確にしておかなければなりません。また、貸している土地で建物を建てようとする動きがあれば、契約違反として直ちに異議を述べることが必要です。

地主さんは借地についての法律をよく知っておこう

底地・借地でトラブルが起こりやすい原因の1つは、「人に貸している土地」であるにもかかわらず、「借りている側」の権利が非常に強いこと。そして、その根拠となるのが、借地借家法(新法)と借地法・借家法・建物保護法(旧法)なのです。

底地・借地の整理を考える時にも役立つ法律の知識

底地・借地の整理を検討しているなら、借地人さんの権利について配慮する必要があるので、今回ご紹介したような法律の知識はぜひおさえておきましょう。なお、「契約がいつ結ばれたのかわからない」「契約書が見当たらない」などのケースでは、新法と旧法のどちらが適用になるのか判断が難しいこともあります。そのような場合は、借地・底地の専門家に相談するのもよいでしょう。

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