地上権とは?賃借権との違いと地主のメリット

2020.06.24

底地をお持ちの地主さんは「地上権」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。地上権には強い権利がありますが、賃借権との違いはご存じない方もいらっしゃるでしょう。

今回は、地主さん・借地人さんと地上権がどのように関係するのか、どんな場合に地上権が設定されるのかについてご解説します。
更地

借地権には地上権と賃借権がある

地上権は、借地・底地など、土地の貸し借りに関連する権利です。地上権の話を始める前に、まずは借地権についてご説明します。

借地権とは

借地権は、地主さんの土地を借りて建物を建てた際に借地人さんが持つ権利です。借地人さんはその対価として地代を支払います。

「お金を払って不動産を借りる」ことには変わりないのですが、「マンションの一室を家賃を払って借りる」のとはちょっと違います。
土地を借りたときの借地権には強い権利があるのです。特に1992年8月より前の借地には旧法が適用されるため、借地人に非常に有利であり、地主さんとトラブルになることもあります。この場合の借地権に認められているのは賃借権であり、地上権ではありません。

【参考コラム】
借地権とは?借地人の権利が強い旧法適用の借地について

地上権は物権、賃借権は債権 その違いは?

では、地上権と賃借権の違いをご説明します。
借地権はその契約内容によって、地上権もしくは賃借権が適用されます。賃借権は債権、地上権は物権です。

債権

債権は特定の人が他の特定の人に、特定の行為をすることを請求する権利です。
ここでのポイントは「特定の人に」という部分です。権利の主張ができるのはその契約を交わした特定の人へのみなのです。債権である賃借権は、借地人が地主に、借地人の建物を建てて住まうことを請求する権利ということになります。

物権

物権は物を直接的かつ排他的に支配する権利です。民法265条には地上権について、“地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。”とあります。
物権である地上権は、借地権でありながら土地を直接的に支配できます。そのため、地主の許可なく、譲渡・売却・転貸できるのです。

通常の借地・底地関係の場合は、権利の強い地上権ではなく、賃借権が付与されている理由がお分かりいただけるのではないでしょうか。

賃借権は登記できないが、地上権は登記できる

地上権には登記義務があります。そこが賃借権との一番の違いです。登記をすることで第三者に権利を主張できるのです。

借地人が地主に地上権の設定を求められるの?

厳密に言うと賃借権も登記できるのですが、地上権のように必ず登記しなければならないわけではなく、借地人が地主に請求する権利もありません。もちろん賃借契約を結んだ際に双方の合意が取れている場合は登記します。

地上権の登記、地主さんのメリットは?

地上権を登記すると、借地人が借地権を地主の許可なしに譲渡・売却・転貸できるようになります。これは借地人にとって大きなメリットです。借地人としては、ぜひ設定してもらいたいところですが、現実はそうではないようです。どうしてなのでしょうか?

地上権があると、地主の承諾なしに譲渡・売却・転貸できてしまう

それは、地主さんにはメリットがないからです。
通常の借地・底地関係で認められているのは、賃借権で、地上権ではありません。
地上権ほどではないものの、賃借権も借地人の権利が強く保証されています。特に旧法適用の借地であればなおさらです。きちんと地代を支払っていれば、借地権は存続し、「借地上の建物が朽ちている」「地代を滞納した」などと、よほどのことがない限りは、ずっと借り続けられます。

しかし、いくら「権利が強い」とはいえ、賃借権の契約では、底地を持つ地主さんの許可なく、借地権を譲渡・売却はおろか、第三者に貸すこともできません(相続は除く)。
相続税評価額では、底地より借地の方が借地権割合が高いこともありますが、実際には制約が多く、地主の許可を得られても、借地権単体では相続税評価額に相当する価格で売却はできません

また、地主さんと借地人さんとの契約にもよりますが、通常は数十年ごとの更新料、建物を建て替えるときの承諾料がいります。
そして譲渡や売却、建て替え時の地主さんの承諾は必須です。

【参考コラム】
借地人が払うのは地代だけじゃないの?

借地の地上権登記をすると、地主さんが土地を支配できなくなるので、認めることはほとんどないのです。

では、どんな時に地上権が登記されるのでしょうか?

地上権が登記されるのはどんなとき?

ほとんどないとはいえ、借地人と地主の間で、合意がなされれば、地上権が設定できます。地上権があると、その土地上の空間と地下を地主の許可なく、自由に使えるようになります。

賃借権は債権なので、必ず金銭のやり取りが発生しますが、地上権は無償で設定しても構いません。
ただし、通常の借地・底地関係でしたら、地上権は設定されないことが多く、借地人さんから申し出があっても、よっぽどの事情がなければ地主さんも応じることはないでしょう。
応じたとしても、それなりの金額を要求するはずです。

地上権が設定されるとしたら、これからお話しする区分地上権・法定地上権の2種類です。

区分地上権とは?

地下鉄や高架道路・地下トンネル・送電線建設などの公共事業で、地上・地下を使用する場合に設定されるのが区分地上権です。名前は「地上権」ですが、地下の利用も含まれます。

地上権がその土地が存在する地上と地下空間すべてに渡って効力があるのに対して、区分地上権は地上や地下など範囲を一部に限定して認められる権利です。

区分地上権が設定されても、借地・底地関係は維持できる

すでに借地として利用している土地の地下に、地下トンネルが通ることになったらどうなるのでしょうか?
その場合は、借地・底地関係は維持したまま、区分地上権が設定されます。事業者は借地人と地主の両者と契約を結ぶことになります。金銭を受け取ることになったら、その所有割合などにより、分配します。

区分地上権がある土地は、利用制限される

基本的に、地下が利用されている範囲のみに区分地上権が設定されます。以下のように敷地の一部のみが利用されているときは、その部分の土地を分筆し(土地を複数に分けること)契約を交わします。
土地を分筆して建物が2つの土地にまたがって建つことになっても問題はありません。
区分地上権の登記
区分地上権のある土地は、その地下にある工作物によって、重さ制限や地下利用制限が課される場合があります。大規模なマンションが建てられる土地であったのに、区分地上権の契約により、難しくなるかもしれません。契約時によく確認しましょう。

地下40m以深は自由に使える?大深度地下使用法とは

トンネル
大都市の地下は地下鉄や地下街、トンネルなどの利用により、比較的浅い地下はすでに混みあっています。そこで、地下空間の有効活用のために平成12年に定められたのが、大深度地下使用法(大深度地下の公共的使用に関する特別措置法)です。国土交通大臣に認可されると、区分地上権を設定せずに、地下を利用できるようになります。
大深度地下は、地下40m以深、もしくは地上の建築物の基礎を支える地盤より10m以深を指します。

大深度地下使用法が認可されたのはまだ少数

ただし、「どこの誰が利用する場合にも認められる」というわけではなく、大都市の公共事業に限られます
現在、この法律が適用されるのは、東京・埼玉・神奈川・大阪・京都・愛知など、大都市のみです。

神戸市大容量送水管整備事業や東京外かく環状道路(関越道~東名高速)ですでに認可されています。最近では、東京―名古屋間に新設される中央新幹線(リニア)に大深度地下使用法が認可されたことで話題になりました。

法定地上権とは?

地上権にはもう一つ、法定地上権というものがあります。
法定地上権が発生するのは抵当権が絡んできたときのみです。ここでは架空の吉田さんの例でご説明します。

吉田さんは土地建物を所有しています。事業資金を借りるために、建物部分を抵当にいれ(担保にし)、お金を借りました。
数年後、残念ながら事業に失敗、借りたお金を返せなくなってしまい、ローン会社が抵当権者となりました。吉田さんのものだった建物は競売にかけられ、川口さんが購入しました。
競売に掛けられた土地
しかし、川口さんが取得した建物は、吉田さんの土地上に建っています。もともと吉田さんが土地も建物も所有していたので、借地権もありません。
吉田さんが承諾しなかった場合、川口さんは取得した建物を使えないことになってしまうのでしょうか?

そのようなことがないように設定されるのが法定地上権です。法定地上権は自動的に発生するので、川口さんは吉田さんの土地上にある建物を自由に使えるようになるのです。

法定地上権

法定地上権は自動的に発生するが登記はしたほうがいい

法定地上権は未登記であっても権利が生じますが、のちのトラブルを防ぐためにも登記はしておいた方がいいでしょう。地主が拒否した場合は裁判所で地上権設定の請求をします。

【参考記事】
第127条関係 法定地上権等の設定/ 国税庁ホームページより

自然発生する権利だが地代は必要

法定地上権は借地権なので、借地借家法に則って判断されます。抵当権の実行に伴い、必ず発生する権利ではありますが、借地権である以上、地代は支払うことになります。

一般的には固定資産税の3~4倍ですが、地主と借地人の交渉によって決められます。交渉決裂した場合は、裁判所により決定されます。

リフォームや建て替えをしても法定地上権は存続する

法定地上権は、地代を2年滞納し、地上権設定者が地上権の消滅を主張すると消滅します。裏を返せば、2年滞納しなければ法定地上権は消滅しないということです。

また賃借権と同じく、土地上の建物が著しく荒廃していればその権利が消滅することもありますが、リフォームや建て替えにより「使用できる状態」が維持されていれば、半永久的に法定地上権は消滅しません

賃借権なら建て替えやリフォーム時には地主の許可が必要ですが、法定地上権は物権なので強い権利を持ち、借地人の一存で行えます。賃借権契約なら請求されることのある承諾料を支払う必要がないのです。

借地人が地上権を登記してもらうことはできるのか?

ここまでお話ししてきたように、借地人が希望しても、特別な事情がない限りは、地上権が設定されることはありません。地主さんは賃貸借契約を結べばいいのです。

地上権・区分地上権・法定地上権は、強い権利です。わからないまま契約することがないようにお気を付けください。不安があれば専門家に相談したほうがいいでしょう。

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