借地人が払うのは地代だけじゃないの?
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相続により借地を手に入れると、「借地とはどういう契約なのか」良く知らないことがあります。借地は、「マンションの一室を借りる」のとは異なり、「借地権」という強い権利が与えられています。借地を持ったことがない人にとってはわかりにくいものです。
平成4年施行の借地借家法により、地主さんに必ず土地が戻るように法律が改正されましたが、それ以前に契約された借地に関しては旧法が適用され、借地人の権利が強く保証されています。
お悩みの方が多いのが、この旧法適用の借地です。いざ相続してみると、支払うのは地代だけではないことに気づきます。増改築の際の承諾料や、おおよそ20年ごとの更新料がかかります。
それだけでなくローンを組めるかどうかも不安ですし、仮に許可が出ても地主さんの印鑑証明や署名捺印を求められます。借地権という権利が保障されながらも、自由にならないのが借地なのです。
今回は、「借地」を相続したものの、どうしていいかわからずお困りの方へ、借地にまつわる費用についてお話しします。
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目次
月2万円の地代でも60年で2,000万円近くの支払いに
都心の土地の値段は高く、車一台分の駐車場代ですら毎月4万円以上、住宅地であっても月2万円以上は当たり前です。一台の駐車に必要なスペースが5坪とすると、坪あたり4,000~8,000円の地代収入になります。
それに対して、借地の地代は非常に安いままになっているケースが多く、東京23区内でも坪あたり月1,000円にも満たないところも珍しくありません。
そう考えると、昔からずっと借りている借地は手放さないほうが得、と思いきや、そうでないことも多いのです。
例えば親の代からすでに60年以上、東京23区内の土地25坪を周辺相場からみると格安の月2万円の地代(800円/坪)で借りていたとします。相場より安いとはいえ、60年払い続ければ、それだけで1440万円です。
20年に一度の更新で、更新料を請求されるのが通常です。
地主さんからは更地価格の10%程度で請求されますが、交渉によって3%ほどに落ち着くこともあります。
更地価格150万円/坪だとすると、25坪で3,750万円、その3%だとしても112万円です。
60年経てば更新が2回訪れ、224万円もの金額になり、10年後には再更新が控えています。
それだけでなく、増改築にも同程度の承諾料がかかります。60年あれば一度は建て替えるでしょうから、合計で2,000万円近くを支払っていることになるのです。今回はずっと同じ地代であったとして計算していますが、土地の価値が上がっている昨今、値上げを要求されることが増えています。それ以上であることも多いでしょう。
そのような大金を支払っているのに、掛け捨ての保険のようなもので、自分の所有物にはなりません。
では次の項で、更新料や承諾料について詳しくご説明します。
借地の更新料とは
地主さんとの契約にもよりますが、更新の際に「更新料」という名目でいくらかを大家さんから請求されます。請求額は更地価格の3~10%程度で、双方の話し合いによって決められます。
木造の家だと原則として借地契約が30年間存続します。期間満了後、更新する場合は20年間で契約するのが一般的です。
地主さんは更新を拒否できるの?
期間満了時に地主さんが更新を拒否したらどうなるでしょうか。借地借家法では、借地上に建物が存在する限り、借地人さんは契約の更新を請求することができ、これに対して地主さんが遅滞なく異議を述べなければ、契約は前と同じ条件で更新する、と定められています。
地主さんが意義を述べるには、「正当事由」が必要であるとされ、それと認められるのは「地主さんがその貸地のほかに住むところがない」といった非常に特殊な事情に限られます。
このことだけを考えると借地人さんの立場が非常に強いのですが、地主さんは地代収入すべてを自由に使えるわけではありません。土地の管理費やその土地の固定資産税などの支払いもあるのです。
支払いは借地人さんの義務ではないとはいえ、一度トラブルになってしまうと関係修復は難しく、増改築や更新のたびに嫌な思いをすることになってしまいます。
特に相場よりかなり安い地代で借りているのであれば、この先も大きな地代の値上げなく借りられることは借地人さんにとって大きなメリットです。地主さんとの関係を良好に保つためにも支払いには応じた方がよいでしょう。
借地の承諾料とは
承諾料は、「家を建て替える」「名義を変更する」など、借地人さん側から何かしらの動きを起こそうとしたときに、地主さんから請求されるものです。
増改築
無断で増改築を行うと借地契約解除の対象となります。ただちに契約解除権が行使できるわけではありませんが、契約書にある禁止事項を破ると、借地権を失う場合があるので注意しなければなりません。
承諾料として請求されるのは、木造なら更地価格の3%、鉄筋等であれば更地価格の8~10%ほどが目安です。
増改築をすると、そこからまた20年間借地権が存続することになります。更新料に近い意味合いがある承諾料です。
条件変更
条件変更とは、非堅固建物(木造)から堅固建物(鉄筋等)へ契約条件を変更することです。建物の構造が変更されるということは増改築の申し出でもあるので、増改築承諾料も含んだ金額が請求されます。更地価格の10%が目安となります。
名義変更
無断で増改築した場合と同様、無断で第三者に譲渡した場合も原則として地主さん側に解除権が発生します。とはいっても「信頼関係を破壊するような特段の事情」が無ければ解除権は否定されますが、承諾料の支払いは要求されることになるでしょう。
その額は借地権の売買価格の10%が相場です。
なぜ承諾料が必要なの?
ところで、なぜこうした承諾料が必要になるのでしょうか。それは「建物が老朽化して住めないようになったら、その土地は地主さんに返却すべし」という法律があるからです。
つまり増改築や堅固な建物の変更は、地主さんの土地を取り戻す時期を遠のかせることにつながります。承諾料はその代償というわけです。
また名義変更料は、「借地が不要になったのなら私に返してください」とする地主の要請の代償です。本来は名義人が不要になったら返還されるはずなのに、違う人が継続して使うのですから地主さんからすれば当然の請求でしょう。
相続による借地の名義変更は承諾料が不要
借地人が亡くなると、その一切の権利は相続人に移ります。そのため、相続による名義変更に承諾料は必要ありません。
ただし、相続による名義変更には「更新」の意味合いはないので、被相続人の契約期間が引き継がれます。
借地権は第三者に売却できるの?
地主さんの許可なしに、借地権を第三者に売却することは認められていません。勝手に売却すると借地権が消滅する可能性がありますので、必ず地主さんに許可をもらいましょう。
借地には借地権割合というものがあり、東京近辺では通常6~7割です。初めて聞く方にはどういうことなのか、分かりにくいのでご説明します。
例えば、借地権割合が70%、1000万円の土地があったとすると、地主さんの持ち分が300万円、借地人さんの持ち分が700万円ということです。
借地権割合は国税局のホームページに公開されています。誰でも確認できますので、調べてみましょう。
ただし、これはあくまで相続財産を評価する場合のためのもので、一般の売買等の際に強制されるものではありません。とはいえ不動産業界でもこれに代わる指標がないため、通常はこの借地権割合を目安に取引されているのです。
借地権割合を知るにはまず、所有する土地の路線価図を確認します。見てみるとわかるのですが、道路に沿って「285D」というような記載があります。
この285という数字が1㎡あたりの路線価で、Dが借地権割合を示しています。図の上部に記載がありますが、Aが90%、Bが80%、Cが70%、Dが60%です。
つまり「285D」とは路線価で1㎡あたり285,000円、借地権割合60%(地主さんの権利割合は40%)であることを示しているわけです。
例えば借地権割合60%の土地だと、借地人さんの権利割合が60%、地主さんの権利割合が40%ということになります。
切っても切れない地主さんと借地人さんとの関係~相続のタイミングで続けるのか検討を~
いくら安く借りられているとはいえ、借地は借地、借りものです。この先もずっと住み続けるのなら、ずっと借地でいいのか、建て替える前に一度よく考えてみることをおすすめします。
地主さんに話してみれば、底地を売ってくれる可能性もあります。また、借地権を買い取ってもらえれば、別の土地に家を建てられます。
地主さんも借地人さんもお互いの自由にならない土地の所有は、煩わしいと感じる場面が出てくるでしょう。双方にとって良い結果が得られるように、早めに検討し始めることが大切です。
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