【事例で見る相続トラブル】相続登記 

2019.07.03

相続にともなってしなければならない手続きは非常に多く、期限もあります。しかし、相続登記には期限も法的義務もありません。そうなると、どうしても相続登記の優先順位は下がってしまいがちです。だからといって「いつかやればいいか」はご法度です。
後回しにしているうちにすっかり忘れ、数十年。ご自身も亡くなり、その不動産を売却・活用しようとした子や孫が大変な思いをするのです。
昔は家督相続といって長男がすべての財産を相続していましたが、今の法律では違います。
相続が繰り返されれば繰り返されるほど、相続登記手続きは面倒になります。そしてその相続登記をしなければ、土地を活用することができないのです。
今回はそんな相続登記の必要性を、事例を通してお伝えします。

不動産登記

<事例>知らないうちに土地の所有者になっていた

ここで東京都在住、近藤和弘さん(仮名・36歳男性)に起こった事例をご紹介します。
※プライバシー保護のため、一部設定を変更してます。

親戚からかかってきた一本の電話

ある日突然、和弘さんの自宅に親戚だと名乗る男性から電話がかかってきました。
「あなたと共有している土地を売却したいので、書類に署名捺印をしてほしい」
和弘さんは自分が土地の所有者になっていることなど全く知らなかったので、何が何だかわかりません。
よくよく話を聞くと、和弘さんの大正生まれの曾祖父名義の土地についての話のようです。電話は本家を継いだ父の弟からでした。
田舎の本家では、家督相続の考えが根強く家族内では暗黙の了解、管理は本家でしていたようで固定資産税も支払ってくれていました。そのため、近藤さんは土地の存在すら知りませんでした。

今回、「本家で祖父が亡くなり、相続税の支払いのためには土地を売るしかないという結論に至ったが、名義が曽祖父のままだったので売却に伴い承諾の署名捺印が欲しい」とのことで連絡が入りました。
順当にいけば和弘さんの父に所有権がありましたが、昨年亡くなったため、現在は和弘さんが所有者の一人でした。

相続登記 家系図

土地の共有者たちとの面識がない

現在の所有者は計7人。和弘さん、和弘さんの妹、和弘さんの叔父、叔母、さらに遠縁の祖父の妹の子、祖父の妹の子の子ども2人が共有している状態にありました。

和弘さんの父は長男でしたが、どうしてもやりたい仕事があって家を飛び出すように出たと聞いています。本家は次男である叔父さんが継いでいました。
そんな経緯があったため、近藤さんは父方の親戚とは疎遠で会ったこともありませんでした。
訪ねてきた叔父を迎え、父の晩年の様子を伝えました。初めて会った叔父はどことなく父に似ていて一年ぶりに父に会ったかのような懐かしさを感じました。叔父も和弘さんの姿に兄を想ったようで、長年のしこりが取れたかのように穏やかな笑顔を見せてくれました。
和弘さんと妹はすぐに署名捺印をし、売却を承諾。これまで固定資産税の支払いもしていなかったので、その分として売却代金の受取りも辞退し、相続税の支払いに充ててもらうことにしました。

このケースの理想的な相続とは?

このケースでは、曾祖父が亡くなった時点で祖父が相続登記をしていれば、ここまで相続人が増えることはありませんでした。
曾祖父が亡くなった時代は家督相続だったので、祖父が相続登記さえしていればその妹の家系にまで面倒をかけることはなかったのです。

起こりうるトラブル

今回は無事全員の承認を得てスムーズに売却に至りましたが、いつもこうとは限りません。以下のようなトラブルが考えられます。

  1. 反対する人・行方不明者がいた
    たとえ1人でも承認が得られないと、解決は非常に難しくなります。こういったケースでは、まず売却したい人が現在の所有者について調査します。親戚と交流があればいいのですが、事例にあるように疎遠になっている人がいたり、親の兄弟の子を探さねばならなかったり、行方の分からない人がいたりすると一筋縄にはいかないのです。
  2. 相続税を支払う現金がなく、金銭的に急を要する
    この事例のように「相続税の支払いができないから土地を売らなければならない」事態だと急を要します。司法書士に依頼すれば調査してもらえますが時間がかかります。また相続税の支払いが困難であるならそのような出費は避けたいものです。
  3. ローンを組みたいのに承認が得られない
    「その土地の建物を建て替えるためにローンを組む」場合も土地の登記名義人が生きていないと契約ができません。建て替えを業者に依頼し、いざローンを組もうとしたらできなかった、というのでは落胆の度合いも高く、業者にも迷惑がかかってしまいます。
    共有者が判明しても、ローンを組むことを承認してくれるとは限りません。また放棄してくれても贈与とみなされると税金の支払いが発生します。
    そして、その人がそれまで不動産の存在を知らず、固定資産税の支払いもしていなかったとしても、売却やローンを組むことに反対すれば何もできなくなってしまいます。

「常識的に考えれば売却を承諾するだろう」「登記をしていなかったとしても家を継ぐ者の所有であるのは暗黙の了解だ」と思っていても、今の法律では所有者になっている以上、権利を主張されてしまえば応じるしかないのです。
では、そもそも相続登記とは何なのか?説明していきます。

相続登記とは?

不動産登記は、不動産の所有権を主張するために必要なのものです。住宅を購入した際に登記をした覚えがある方も多いでしょう。
そして、相続が発生すると「相続による所有権移転登記」が必要になります。故人名義になっている不動産の登記を相続人に移す作業で、それがいわゆる相続登記です。

前述の事例にもあるように、相続登記には法的な義務があるわけではないので、手続きを後回しにしがちです。また売却するなどの動きがない限りは困ったことにはならないのも手続きが遅れる要因の一つでしょう。
また、旧民法には「家督相続」という法律がありました。その名残りで「長男が不動産の所有者である」と家族の中では認識されており、それゆえ相続登記に必要性を感じていない場合もあるようです。

家督相続とは?

旧家

旧民法では戸主(家長)が死亡・隠居した場合、長男がすべての財産を受け継ぐ権利を有していました。これは明治31年から昭和22年まで適用されていた法律です。民法が改正された今、法律としての効力はなくなりましたが、いまだにそれが暗黙の了解となっていることも多くあります。

どうして相続登記が必要なの?

相続登記はその不動産が自己の所有だと証明する必要があるときに効力を発揮します。例えば、自己所有の土地に賃貸アパートを建てるためにローンを組むとします。すると、銀行からその土地の登記名義人であることを示すように言われます。その証明として登記簿謄本(登記事項証明書)を提出するのです。
また、登記していないと、悪意のある誰かに勝手に登記され、不動産を奪われてしまう恐れがあります。その時に登記名義人が死亡している不動産だと、自分のものだと主張しても却下されてしまう可能性が高いのです。

相続登記は急ぐべき!「故人名義の権利証には何の効力もない」

不動産の登記をした際に発行される権利証は売却時に必要な書類です。しかし相続後は自己所有であることを証明するものにはなりません。なぜかというと、名義人が亡くなると同時にその権利証は何の効力も持たなくなってしまうからです。「相続登記をしなくても、亡くなった父の権利証があるから大丈夫」と安心していてはいけないのです。
故人名義の権利証は、相続登記の際に必要ありません。見つからないからと言って手続きに二の足を踏まず、すみやかに手続きを済ませましょう。

知らないうちに所有者になってしまうこともあるの?

法律では登記名義人が死亡した場合、その不動産の権利は法定相続人に引き継がれます。相続登記をしなくてもそれは同じことです。
また相続登記は、法定相続通りになされる場合は、法定相続人が複数いても代表者一人による手続きが可能なので、本人が知らないうちに所有者であった、ということが起こりえます。

しかし、権利を主張するためには登記されていることが重要なので、権利を守るためにはしておかなければならないものなのです。

平成29年開始の法定相続情報証明制度で相続登記がラクになった

 

法定相続情報証明制度

法務局ホームページより引用

平成29年5月より法定相続情報証明制度が開始されました。これにより「法定相続情報一覧図の写し」を取得し提出することで、これまで必要だった「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本など相続を証明する書類一式」の代わりとできるようになりました。

なぜ新設されたの?

これまでの相続手続きでは、戸徐籍謄本など複数の書類を、各窓口に何度も出し直す必要がありました。
しかし、「複数の提出書類を揃えなければならない」、「何度も同じような手続きを繰り返さないといけない」ことから相続登記がなされず、それに伴うトラブルが目立つようになりました。
そこで新設されたのが、「法定相続情報証明制度」です。

どうやって法定相続情報一覧図の写しの交付を受ければいいの?

まず、「被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍関係の書類」や「住民票の除票」、「相続人の全員の戸籍謄本・抄本」などを用意します。
次に、被相続人の最終住所、本籍地、出生日、死亡日などを記載した法定相続情報一覧図を作成します。以下法務局ホームページより様式と記載例がダウンロードできますが、様式さえ間違っていなければ、手書きでも可能です。
用意した上記書類一式を法務局に持っていき、申出を行います。
すると登記官より、法定相続情報一覧図に認証文を付した写しが必要数無料で交付されます。
手続きができるのは、相続人または委任された親族や士業者(弁護士・司法書士・税理士など)です。一度手続きしてしまえば、法定相続情報一覧図の写しは郵送での取得も可能です。

具体的な手続きについては、以下、法務局HPよりご確認ください。
法定相続情報証明制度の具体的な手続について

また「法定相続情報一覧図の写し」は銀行での手続きにも利用できます。ホームページで確認したところ、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行などの大手銀行では利用可能でした。その他にも保険金の請求、有価証券の名義変更など使える場面が増えています。

参考リンク
「法定相続情報証明制度」について/法務局HP

最優先で行いたい相続登記

期限のない相続登記手続きですが、しておかないとトラブルが起こったときに問題が大きく、解決が難しくなってしまうので、優先順位を上げてやっておいてほしいことの一つです。
法定相続情報証明制度を利用し、「法定相続情報一覧図の写し」を最初に取得すれば、以後の相続関連手続きで用意する書類と手間が大幅に少なくなります。
また法定相続情報一覧図の写しは申請後5年間保管され、無料で取得できます。謄本などをそれぞれの手続きに必要な分を揃えると思いのほか費用が掛かるので、ご利用をおすすめします。
ご自身やご家族が円満に過ごすために大切な相続登記。「そういえば祖父の名義のままだった」という方はこの機会に済ませていただければと思います。

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