【不動産の売却】譲渡所得と譲渡所得税の節税方法を解説

土地・建物(不動産)などの資産を売って得た利益は「譲渡所得」として課税されます。しかし、実際には、「土地が5,000万円で売れたけれど、税金を1円も支払わずに済んだ」というようなケースがたくさんあることをご存知でしょうか。

ポイントは、「利益」が出た場合のみ「譲渡所得」となり課税されるということ。利益とは簡単に言ってしまえば、「売れた価格」と「その土地・建物を購入した時の価格」の差なのですが、ここに節税のヒントがあります。譲渡所得で損しないためには、その仕組みを正しく理解する必要があります。

そこで今回は、譲渡所得と譲渡所得にかかる税金(譲渡所得税)を効果的に減らす節税方法についてわかりやすくご紹介します。

土地・建物の売却

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譲渡所得ってどんなもの

譲渡所得とは、個人が資産を譲渡することで得た利益のことです。

そもそも譲渡とは何? 贈与とはどう違うの?

譲渡とは、資産の所有権を移転させること。金銭のやり取りが発生しているかどうかは問いません。したがって、通常の売買はもちろん、贈与のように無償で渡す場合も譲渡に含まれます。

土地・建物だけじゃない! 売却したら譲渡所得の発生する資産

売却することで譲渡所得が発生する資産は、基本的に「経済的な価値があるものすべて」です。多いのは、土地・建物などの不動産や株式、ゴルフ会員権などですが、他には、借地権や金地金、宝石などもあります。

ただし、通勤に使っている車や家財道具のように、生活に必要なものを売って得た利益は、譲渡所得にはなりません。また、商売をしている人が商品を売ったときも、事業所得となり譲渡所得ではありません。

土地・建物の売却

譲渡所得は、その資産を売って得た「利益」のこと

資産を売ってお金が入ってきても、それがそのまま譲渡所得になるのではありません。譲渡所得とはあくまでも「売却で得た利益」のこと。つまり、資産を売って得られた金額から、その資産を取得・売却するためにかかった費用を差し引いてプラスが出れば、「譲渡所得」として税金がかかるという仕組みです。

譲渡所得は、資産を保有している間に資産の価値が上がったら、その値上がり部分に対して課税すべき、という考えにもとづいています。したがって、その資産を取得したときと同じ価格や、取得時よりも低い価格で売却する場合には、譲渡所得は発生しません

譲渡所得税の計算方法~ 不動産売却時にかかる「譲渡所得税」

不動産を売却すると発生した利益(譲渡所得)に対して、譲渡所得税という税金が発生します。

税法上は、不動産売却で得た利益は「譲渡所得」として所得税に分類されます。ただし、不動産を売却した場合の譲渡所得は「申告分離課税」として確定申告し、「総合課税」である給与所得や事業所得などとは分けて税額を計算するので注意しましょう。

譲渡所得を計算する

譲渡所得税の計算では、まず譲渡所得の金額を計算します。譲渡所得を計算するには、土地や建物を売却して「値上がり益」が出たかどうかを判断する必要があります。したがって、計算式は以下のようになります。

譲渡所得 計算式

収入金額は、資産を売却した価額のことです。取得費はその資産を手に入れるためにかかった費用、そして譲渡費用はその資産を売却するためにかかった必要経費です。

譲渡所得にかかる税金を少なくするには、取得費と譲渡費用をきちんと計上して、譲渡所得の額を減らすことが大切です。これについては次の「譲渡所得を節税するためのポイント「取得費」と「譲渡費用」」で詳しくご紹介します。

譲渡所得を具体的に計算してみよう

(例)3000万円で買った土地を売却するため150万円かけて造成工事を行い、不動産業者に依頼したところ、4000万円で売れたとします。売却時、不動産業者に仲介手数料として100万円を支払いました。この場合の譲渡所得は、

4000万円−(3000万円+150万円+100万円)=750万円

となり、750万円に対して課税されることになります。

譲渡所得の税率は?~不動産の所有期間で変わる

土地・建物の売却

譲渡所得の税率は売却する資産の種類によって異なりますが、不動産の場合は、所有期間により「長期譲渡所得」「短期譲渡所得」に分けられ、税率が異なります。

具体的には、売却した不動産の所有期間が5年を超えているかどうかによって変わります。

◆所有期間が5年以内
分類:短期譲渡所得
税率:39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)

◆所有期間が5年超
・分類:長期譲渡所得
・税率:20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)

※ともに2037年までは所得税に対して2.1%の復興特別所得税が加わります。

詳しくは、以下の記事もご参照ください。

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譲渡所得を節税するためのポイント「取得費」と「譲渡費用」

課税される譲渡所得を減らすには、必要経費として土地を売った時の金額から差し引ける「取得費」と「譲渡費用」を正確に計算することが大切です。どんな費用が取得費と譲渡費用に含められるのかをチェックしましょう。

「取得費」ってこんなもの

実際にその土地を購入した時の金額にプラスして、以下のようなものも取得費に含めることができます。

所得費用の一例

知っておきたい「取得費」についてのルール5つ

その1:取得費を示すために、買った時の金額を証明するものが必要

取得費

取得費を計上するためには、購入時の領収書や請求書、通帳のコピーなど実際の出費を説明できるものが必要です。数十年前に買った土地であれば、価格はいくらだったのか、土地を買うためにどのような出費があったのか、記録が残っていないケースもあるでしょう。「1,000万円で購入した記憶がある」のような主張は通りません。客観的な資料を用意できないものは、取得費に含めないようにしましょう。

その2:取得費がわからなければ、「売却価格の5%」が取得費になってしまう

その土地をいくらで購入したかわからない場合は、売却価格の5%を取得費としなければなりません(※)。しかし、これでは、あまりにも少額になってしまうため、ほとんど譲渡所得が減らせないのです。

取得費

例えば、「1000万円で売れた土地の取得費用が50万円だった」というのは通常考えにくい状況ですが、その土地を買った時の価格を証明できなければ、取得費は50万円で計上するほかありません。さらに、この「売却価格の5%」を取得費にする時は、上記のような、土地の購入にかかったこまごまとした諸費用を含めることもできないのです。

※昭和28年以降に取得した土地の場合、公表されている市街地価格指数などを用いて取得費を計算できる可能性があります。しかし、その方法で計算した取得費が税務署に認められないことも多く、裁判になった事案の半数以上で否認されています。個別に税理士に確認するのがのぞましいでしょう。

その3:取得費が安すぎるときも、「売却価格の5%」が取得費に

土地の購入価格がいちじるしく安いなどの理由で、実際の取得費が「売却価格の5%」を下回る場合も、「売却価格の5%」が取得費になります。想定されるのは、ご先祖様が購入して代々受け継いできた土地を売却するようなケースです。

取得費

昔と今では貨幣価値が違いますが、土地の取得費用はそのまま受け継がれます。例えば、明治時代に1,000円で買った土地の取得費は、現代でも1,000円です。この土地が5,000万円で売れたとしたら、5,000万円から差し引ける取得費はわずか1,000円なので、そのほとんど全額が譲渡所得になってしまいます。

そこで、売却価格の5%である250万円を取得費としますが、これでも4,750万円が譲渡所得になり、かなりの額の税金がかかってしまいます。古い土地の売却では、譲渡所得が発生しやすくなるのです。

その4:相続して3年以内の売却なら、支払った相続税も取得費に含められる

相続した不動産を売却する場合、相続税の申告から3年以内であれば、その不動産を相続するために支払った相続税の一部を取得費に加算できるという特例があります。なお、相続で取得した不動産を売却する場合も、取得費は相続時の評価額ではなく、亡くなった人がその不動産を買った時の金額です。

相続税申告書

その5:建物の取得費を計算する場合は、「減価償却」もお忘れなく

建物を売却する場合は、取得費から、減価償却相当額を差し引いて計算する必要があります。減価償却とは、年月を重ねることで徐々に劣化していくと考えられる資産に対して、その価値を税務の計算上、毎年減らしていくこと。建物の場合、新築と築30年ではその税務上の価値は大きく異なるため、それを取得費の計算にも反映させるのです。

建物が古くなれば古くなるほど、減価償却累計額がアップするので、取得費の額は小さくなります。減価償却の金額は「建物購入金額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数」で計算します。詳しくは、国税庁のウェブサイトをご参照ください。

「譲渡費用」にはこんなものがある

売却にかかる費用で代表的なのは、不動産業者への仲介手数料でしょう。その他にも、譲渡費用に含めて良いのは以下のようなものです。

譲渡費用として認められるもの

上記のものを譲渡費用とするには、取得費の場合と同じく、領収書など、その支出が確かにあったことを示す書類が必要です。また、間接的には売却のためにかかったものであっても、以下は譲渡費用として認められません。

譲渡費用として認められないもの

譲渡所得税を節税するために活用したい特例

譲渡所得は金額が大きくなることが多く、税負担も重くなりがちです。譲渡所得税の負担がネックになって「個人が自宅を売却できない」とならないよう、「マイホーム」と「空き家」の売却には特例が設けられています。

以下、譲渡所得税を節税するために活用したい5つの特例をご紹介します。

1)居住用不動産売却時の3,000万円特別控除

居住用不動産(マイホーム)を売却して発生した譲渡所得は、最高3,000万円まで非課税の特別控除を受けることができます。

控除を受ける要件は以下の通りです。

  • 売主の居住用の不動産であること
  • 譲渡先が配偶者・直系血族・同族会社ではないこと
  • 前年や前々年にこの控除を使っていないこと

2)所有期間が10年を超える場合の軽減税率

上記の特例を使っても控除しきれない額の譲渡所得が発生している場合、マイホームの所有期間が10年を超えていれば、特別控除と併用して、軽減税率の特例を受けることができます。

軽減税率は以下の通りです。
◆課税譲渡所得が6,000万円以下の場合
・20.315%→14.21%の軽減税率が適用(所得税10.21%+住民税4%)

◆課税譲渡所得が6,000万円超の場合
・6,000万円以下の部分:20.315%→14.21%の軽減税率が適用(所得税10.21%+住民税4%)
・6,000万円超の部分:20.315%(所得税15.315%+住民税4%/軽減税率適用なし)

この特例を利用する条件は以下の通りです。

  • 売却した年の1月1日時点での所有期間が10年を超えていること
  • 前年、前々年にこの特例を受けていないこと
  • 親子や夫婦間の売買ではないこと

3)特定の居住用財産の買換え特例

2021年(令和3年)12月31日までに居住用財産(マイホーム)を売却し、新たにマイホームを購入したときは、売却時に発生した利益(譲渡所得)にかかる税金は、新たに購入したマイホームを売却する時まで繰り延べできる特例です。この特例は、あくまで納税時期の「繰り延べ(後送り)」ですので免税ではないので注意が必要です。

繰り延べできる金額は、買い替えたマイホームの購入金額により変わります。新たに購入したマイホーム価格が、もともと住んでいたマイホームの売却価格と同額以上の場合は、税金は全額繰り延べできます。逆に買い替え時の購入金額のほうが低い場合は、差額に対して税金がかかります。

この特例を利用するための条件は以下の通りです。

  • マイホームであること
  • 売却価格が1億円以下であること
  • 前項1)の「3,000万円の特別控除の特例」などを利用していないこと
  • 売却した年の1月1日時点で売却する不動産の所有期間が10年を超えていること
  • 売主の居住期間が10年以上であること

4)相続した不動産の場合の取得費加算特例

相続した不動産を、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却した場合、不動産相続時に納めた相続税の一定金額を不動産の取得費に加算できる特例です。

この特例を利用する条件は以下の通りです。

  • 売却した不動産が相続や遺贈によって取得したものであることと
  • 相続した人に相続税が課税されていること

5)相続した居住用財産(空き家)を売った場合の特例

相続した空き家の不動産の売却益(譲渡所得)を最高3,000万円まで控除できる特例です。

この特例を利用する条件は以下の通りです。

  • 相続した空き家不動産を2016年(平成28年)4月1日から令和9年(2027年)12月31日までに売却していること
  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築されたこと
  • 区分所有建物登記の建物ではないこと
  • 相続直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと、などです。

土地や建物を売却したら、確定申告をお忘れなく

不動産を売却して譲渡所得が発生した場合は、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をしましょう。特別控除を利用した結果、納税が不要になるケースでも、制度を利用することを示すために確定申告が必要です

土地建物売却

確定申告することで得することも

売却した不動産が値下がりしていたため、譲渡所得が出るどころか利益がマイナスになってしまった、というケースもありえます。この場合、確定申告する必要はありませんが、もしマイホームの売却で損が出たのなら、一定の要件を満たせば、給与などの他の所得と不動産の売却損を相殺して損益通算できます。結果的に支払う税金の額が抑えられるので、当てはまる人はぜひ申告しましょう。損失は最大で3年間繰り越しできます。適用条件は、国税庁のウェブサイトをご確認ください。

譲渡所得の申告は自分でできる?

譲渡所得を算出するための計算式自体は比較的シンプルなので、自分で申告するというケースも珍しくありません。しかし、譲渡所得を節税するうえで大切な取得費用・譲渡費用については素人では判断が難しいものです。誤った申告書で損してしまわないよう、税理士に相談するとよいでしょう。

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