相続税、我が家は支払い対象?

平成27年1月より、相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられました。そのことで、相続税の課税対象になる方が増加しています。
とはいえ、相続税の支払い対象になるのは全体の約8%。すべての人が課税されるわけではありません。一番少ないケースで3600万円の控除額があり、それを上回った資産があると課税対象になります。
相続税を支払うのは、相続人です。いくら親子といえど、相続人が被相続人(故人)の財産の全てを把握しているケースは、そうないでしょう。蓋を開けてみたら思いのほか財産が多く、相続税の支払い対象であった、ということもあります。
相続が発生したら、まず一番はじめにやってほしいのが遺産額の把握です。現金だけではなく、有価証券、家や土地などの不動産とさまざまで、把握するだけでも時間がかかるので早めに着手します。
全部現金なら把握しやすいのですが、不動産は相続税評価額で計算されるため、きちんと計算してみないとわからないものです。
そしてスムーズな相続のためには、ご本人が健在のうちに財産を整理しておくことも重要です。相続までにまだ時間がありそうなら相続対策をおすすめします。余計な税金を支払わなくてよくなるかもしれません。
今回は相続税の計算方法と、注意点についてご説明します。

不動産

相続税の支払い対象はいくらから?

相続税は、総資産額から控除額を引いた相続税評価額から算出されます。基礎控除だけでなく各種控除がありますが、ざっくり言うと総資産額3600万円以下なら相続税はかかりません。
では、基礎控除と、その他にどんなものが控除されるのか見ていきます。

基礎控除額の出し方

基礎控除は、資産額に関係なく3000万円に法定相続人数×600万円を足した金額です。例えば、相続人が妻と子ども2人なら、基礎控除額は4800万円です。
相続税の計算に使われるのが相続税評価額です。現金の価値はそのままの額、不動産はそれぞれに相続税評価額が設定されています。土地の相続税評価額は市場価格ではなく、主に路線価から算出されます。路線価は、市場価格の8割程度であることが多いようです。
詳しくは、以下の記事でご確認ください。

知らないと損をする!土地の評価額を下げて節税する方法

基礎控除=3000万円+法定相続人数×600万円

課税対象額=総資産の相続税評価額ー控除額(基礎控除+その他の控除)

以下、基礎控除以外の控除についてご説明します。

その他の控除

マイナスの財産

相続するのはプラスの財産だけとは限りません。未払い金や債務、借金などのマイナスの財産は控除されます。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、相続で取得した財産のうち、被相続人から居住用または事業用宅地を引き継いだ場合、相続税評価額の80%または50%を減額するという大きな特例です。ただし、適用対象となる宅地とその面積には上限があります。
この特例には、遺された家族が相続税の支払いのために、これからの生活に必要な宅地を奪われないようにする目的があります。
適用対象者は、「被相続人の配偶者」「被相続人と同居の相続人」などに限定されます。
減額の幅が極めて大きく、適用要件もやや複雑です。各々のケースによって工夫余地がありますので、ご自身の状況に照らし合わせ、精査することをおすすめします。
小規模宅地等の特例の概要は以下リンク先でご確認ください。

相続税の軽減措置「小規模宅地等の特例」とは

一部控除される「みなし相続による財産」や「贈与税控除」については別項でご紹介します。

相続税の課税対象にならない財産

葬儀費用

財産の中でも一部のものは相続税の課税対象にはなりません。
例えば葬儀費用は、相続税の計算をする際、故人の財産から引いて良いことになっています。
一般的に葬儀費用は「亡くなった人」が支払うものではなく、家族が業者と契約し支払います。しかし、故人が亡くなったことにより発生した費用なので、課税対象にはなりません。
また先祖代々受け継いだ仏壇や墓などは、ものによっては高額です。これらは相続発生時に故人が所有者だったとしても財産としなくてよいものです。しかし、葬儀費用と違って、死後の購入分は控除されないので、ご注意ください。

みなし相続による財産

みなし相続財産とは、亡くなった時点では被相続人の財産ではなかったものの、相続が発生することで相続人のものになった財産を「故人の財産の一部」だとみなして、相続税の課税対象とされる財産のことです。
みなし相続財産の代表的なものには、死亡退職金と生命保険金があります。
これらは被相続人の生前は財産ではなかったものの、その方の死亡により発生したお金です。そのため本来は相続財産とは言えないはずのものを、相続税法上は財産であったとみなして課税します。
ただし、そのまま全額が相続税評価額に加えられるわけではなく、以下の計算式により一部は控除されます。

生命保険金の控除額 = 法定相続人数×500万
死亡退職金の控除額 = 法定相続人数×500万

生命保険金と死亡退職金の両方が発生した場合は、それぞれに対して上記の額が控除されます。

相続税対策にも使える「みなし相続」

相続税対策として保険を利用する場合は、この控除額を考えて契約をします。
例えば、法定相続人が妻と子3人だった場合、預金として2,000万円持ったまま相続が発生すると、当然のことながらその2,000万円は相続税の課税対象になります。
しかし、事前に受取金2,000万円の保険に入っておけば、500万×4(法定相続人数)=2,000万円は課税対象になりません。
そして、支払われた生命保険金は、指定しておいた受取人が受け取れるので、特定の相続人に財産を多く残したいときに使うこともできます。
前述のとおり、この保険金は相続財産ではないので、遺産分割協議の対象にはならず、指定した受取人のものとなります。

相続時精算課税制度を利用すると相続時に課税される

贈与税額控除

贈与税額控除とは、相続税を算出する際、故人が相続開始前3年以内にした贈与分は、故人の財産であるものとして計算に含める、というものです。
したがって3年以内の暦年贈与分は、110万円の基礎控除以下の贈与であっても相続財産に加算されてしまいます。
一方、3年以内の贈与に関して贈与税を支払っていた場合は、その贈与税額は相続税の前払いとされ、相続税と相殺されます。そして、相続税が課されない場合には還付されます。これが贈与税額控除という規定です。

資産

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は110万円にこだわらず、一度に多額の贈与を認めるという特例です。これはいわば、「いずれ相続するであろう人に生前に相続させられる制度」と言って良いでしょう。
通常は生前に財産を分け与えると贈与となり、110万円以上の分は贈与税がかかります。
贈与税は相続税より課税割合が高く設定されていますので、贈与すると税金を多く払うことになります。しかし、相続が起こるのは10年、20年先かもしれません。今すぐに使わせたいこともあるでしょう。
そんな時に便利なのが相続時精算課税制度です。60歳以上で財産を持つ人が、いずれ相続人となる人(未成年者を除く)に贈与をしても2500万円まではその時点では贈与税がかからず、その分は相続時に、相続税評価額に入れられる、というものです。生前に贈与したにもかかわらず、税金は相続税として相続時に払えばいいので、場合によっては利用したい制度です。
特に相続税の支払い対象外の方はぜひ使いたい制度です。生前に贈与しても贈与税がかからず、相続発生時に相続税評価額に加えられても支払い対象でないのなら、税金を払わずして、贈与ができることになります。
ただし、相続税支払い対象で、相続時精算課税制度を利用していた場合は、相続税評価額に入れなければならない財産なので、申告の際、忘れないように気をつけましょう。

また、相続時精算課税制度を利用し2500万円以上の贈与をしたが3年以内に相続が発生してしまった場合は、2500万円を超えて贈与した分もすべて贈与税ではなく、相続税の課税対象であったとされ、過分に払っていた分は還付されますので申告してください。

相続時精算課税制度の説明はこちらからご覧ください。
相続財産の「前借り」ができる相続時精算課税制度/【円満な相続を目指そう】相続開始前に知っておくべきことは?

「借地権」「底地権」の相続税評価額に注意

相続した財産に「借地権」や「底地権」がある場合は、注意が必要です。土地をまるまる所有しているわけではなく、その所有割合によって価値が変わるからです。
特に借地権は、土地を所有している感覚はなくても、相続財産の一部であるので、申告漏れがないようにしましょう。
借地権と底地権について、底地や借地の相続については、以下の記事をご参照ください。

【参考記事】

底地権について
借地人さん必見!借地権相続のスムーズな手順
底地相続で予想されるトラブル

相続税支払い対象の方も、そうでない方も、今のうちにご自身の財産をしっかりと把握し、整理することで、余計な税金を払わなくてよくなる可能性が大いにあります。
心身ともに健康なうちに、ぜひご自身の財産の行く先について、考えを巡らせてみていただければと思います。

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