アパート経営による土地活用

2019.10.16

土地をたくさんお持ちの地主さんは、相続について不安に感じることも多いでしょう。少しでも相続税を減らし、ご先祖様から受け継いだ資産をなるべく多くのこしたいがどうしたらいいだろうか、と思い悩むのも当然です。

そんな地主さんは業者さんからアパート経営を持ちかけられることも多いようです。確かにアパート経営は節税対策に有効です。
しかし専門家でもない限り、アパート経営がご自身やそれを受け継ぐ方にとって有益なのかは判断が難しいものです。
今回は、アパート経営のいい面だけでなく、リスクについてもご説明します。

新しいアパート

アパート経営開始前に確認したい3つのこと

ご自身が60代、70代になると「相続」が現実のものとして目の前に迫ってきます。そこで相続税対策として、最近よく耳にするアパート経営をしてみようか、と思い立つことがあるかもしれません。
しかし、そこは慎重になるべきです。その理由をご説明します。

1.納税資金は確保されているか?

アパートを建築すると建築費がかかります。今、お持ちの現金で支払い可能でも、それですっからかんになってしまうようでは考えものです。生活費はアパート経営による利益で賄えるかもしれませんが、いざ、相続が起こったときに相続税の支払いができなくなってしまいます。
財産の中に潤沢な現金があればいいのですが、「そのほとんどが不動産で現金は少ない」となると、納税資金は相続人が負担しなければなりません。
その結果、アパートと土地を手放すことになりかねないのです。

2.アパートが建っていることで土地の価値が下がるかもしれない

古いアパート

売却しようとすると、「アパートが建っている」ということが土地の価格にも影響します。建てた側から見れば、土地と建物どちらも価値のあるものですが、購入者側にとっては自分の意に沿わない建物が建った土地の価値は下がります。
購入者が思うようには使えない土地は、周辺相場の更地価格では売れないでしょう。場合によっては「建物を取り壊してくれたら土地を購入してもいい」と、建物の価値がゼロどころか、解体費用の負担を求められます。

仮にアパートの建築費をローンにより調達していたら、その支払いに加え、取り壊し費用が発生します。税金対策したはずが、かえって財産を減らしてしまうのです。

3.利回りを意識したアパート経営であるか?

地主さんが「遊ばせておくよりは相続税対策を兼ねてアパートを建てようか」と考えた場合、土地はすでに自分のものなので、回収すべきはアパートの建築費のみです。節税効果も考えて5%程度の利回りでもよしとする場合も多いでしょう。
なおこの場合の「利回り」とは「年間家賃収入÷土地・建物の時価」で計算します。年間家賃収入は満室を前提としています。

利回りってなに?

ここで「利回り」について補足します。「利回り」とは、買主が収益物件(土地+建物)を買おうとする場合の判断基準です。
そのため自分の敷地であってもアパートを建てる際に「利回り」を考えるのであれば、当然「敷地の時価+建築費」が分母としなければなりません。
中には所有する土地代を含めずに計算しては、「ここアパートを建てると10%の利回りになります」といった、いかにも有利であるかのようなセールストークを使う業者もいます。しかし、土地代をゼロで計算すれば、高利回りになるのは当たり前です。業者さんの言っていることを鵜呑みにしないように気をつけましょう。

一般的に見て採算がとれるならアパート経営を検討する

そのままアパート経営を続けるのなら良いのですが、万が一、土地と建物をセットで売り出すことになった場合、購入者はもちろん土地と建物の購入費を鑑みた利回りを計算して購入を検討します。
一般にアパートの買い手から求められる利回りは、アパートの所在する地域によって変わります。都心部なのか郊外なのか、最寄り駅に近いか、築年数はどれくらいかによって、3~12%とさまざまです。仮に築後20年程度の郊外物件であれば、通常は8~10%の利回りを求められます。

そうなったときに建築費と土地代を家賃収入で賄える物件でなければ、建物代も支払ってくれる購入者は現れないでしょう。結局は、建物代金はなかったものとし、更地価格でやっと売れるという状態に陥ってしまうのです。

例えば、売値が一億円、年間収入(家賃収入)500万円のアパートがあったとします。このアパートの利回りは5%ということになりますが、この地域の標準的な利回りが8%であれば、市場では見向きもされません。

そこで利回り8%(500万円÷0.08)を確保しようとすると、売値を6,250万円まで下げることになります。10%の利回りを要求されれば半値の5,000万円(500万円÷0.10)です。
その価格では更地価格にしかならず、建物を建てた分の費用は無駄になってしまうのです。

事業計画が35年なら要注意 相続人がアパート経営する気があるのか確認を

連絡を取る親子

業者さんからアパート経営について提案があった場合、最長のローン期間である35年のスパンで計画が立てられていることが少なくありません。なぜかというと、ローン年数が長ければ、月の支払いも少なくなり、パッと見たときの資金繰りの体裁が良くなるからです。
このような長期計画でアパート経営を始める場合、上記の相続税納税資金が確保されているかと合わせて「相続人にアパートを経営するつもりがあるか」を確認しておくことが大切です。

60歳の方が今からアパート経営を始めるとすると、ご自身が健在のうちに建築費を回収するのは難しい場合が大半でしょう。
入退去や家賃の管理、設備の修繕や周辺の掃除、災害があればその対応もあります。税金の申告などの事務作業も発生するので、相続人はそのつもりでライフプランを立てなければならないのです。

途中で売却すると損をする。家族に相談を

これまでご説明した通り、アパート経営は途中で売却するのが一番損をします。例えご本人が亡くなったとしても、相続人の誰かがアパート経営を続けるのなら問題はありませんが、相続人に続ける意思がなかったり、仕事の都合上難しかったりすることもあります。財産を減らすだけにならないように注意が必要です。

長期の計画でアパート経営を始めるのなら、ご自身が経営できなくなった後、継続してくれる相続人がいるのか、しっかりとご家族に相談してからがいいでしょう。

完済時100歳になる人でもローンが組めるの?

65歳の方がローンを組む場合、通常の住宅ローンは断られるのが大半ですが、アパート経営なら条件によってはローンが組めます。その条件とは、事業計画書の提出と推定相続人全員が連帯保証人となることです。
65歳で35年ローンを組んだら、完済時には100歳です。年齢を考えると完済前に相続が発生する可能性が高いので、そのような条件が出されます。

もし「アパート建設のためのローンの連帯保証人になってほしい」と相続人となる予定の人が署名捺印を求められたら、その事業計画から詳細に確認しましょう。採算が取れないアパート経営であれば、そこが踏みとどまる最後のチャンスです。間違っても、「言われるままにサインしてしまった」ということがないようご注意ください。

サブリース契約をするなら空室や家賃収入減の可能性を想定する

アパート経営すべてを業者に任せるサブリース契約をするケースもありますが、任せきりにせず採算が取れるかをご自身で判断することが大切です。業者の言いなりでなく、自分で勉強をし理解してから契約しないと、大きなリスクが伴います。
任せるにしても、昔から知っている地元の会社にした方が安心かもしれません。

例えば、業者が用意した事業計画で、35年間ずっと同じ家賃収入がある想定のことがあります。
ちょっと考えを巡らせてみてください。新築してからの数年は家賃10万円で簡単に借り手がついたとしても、10年、20年経てば建物は古び、設備の不具合が出てきます。そうなったときに10万円の家賃で借り手がつくでしょうか?
空室が目立つからと家賃を7万円に下げれば、生活費として見込んでいた収入も足りなくなるかもしれません。

よく理解せずに契約してしまって、10年経過した時に業者から、「施設が古びたので修繕費を支払ってほしい」「入居者が減ったので家賃を下げる」などと言われ、収入が激減するケースもあります。その時点で訴えても、契約書に記載があり、署名捺印をしてしまっているのですから、泣き寝入りするしかありません。

「税金対策」だけでなく、一般的に見てアパートに適している土地か見極める

地主さんがアパート経営を始める場合、その土地ははじめから所有しているものであり、場所を動かすことができません。
それだけに「その立地でアパートの経営が成り立つのか」についてはシビアに判断しなければならないのです。いくら税金を減らせても、これまでご説明してきた通り、財産を目減りさせるだけのアパート経営になってしまっては元も子もありません。

含み損を発生させなければいい

「常に満室」とまではいかないものの、ある程度の家賃収入が見込めるのであれば、税金対策として5%の利回りでもアパートを建てるのは有効でしょう。
駅前でなくとも、大学や大きな工場など、アパート利用が見込まれる層がいるのなら検討の余地はあります。

要は含み損を発生させなければいいのです。含み損とは、所有する不動産の価値下落によって生じる損失のことです。無計画にアパート経営を開始し、途中で手離すようなことにさえならなければ、税金対策としても有効です。詳しくは次項でご説明します。
含み損は時の経過とともに減少を続け、最後にはなくなってしまいます。売却せずに保有し続ければ、損はせず、建築資金は家賃で全額回収できるのです。
6,000万円の更地に4,000万円のアパートを建てて数年で売却することになると、一番損をします。売りに出しても6,000万円程度にしかならないからです。その段階で売ると4,000万円が含み損です。
以上の通り、アパート建築の最大のデメリットは、売ると表面化する巨額な含み損の発生なのです。

アパートの3つの節税効果

節税

ここまでお話してきましたが、もちろんアパート経営をすべきではない、ということではありません。適した土地ならアパート経営の節税効果は抜群です。

1.貸家建付地は相続税が約2割減額される

賃貸住宅の敷地は貸家建付地といいます。この土地を売却しようとすると、借家権で保護されている入居者を立ち退かせなければならず、それには経費や時間がかかるため、相続税評価額が約2割減額されます。

2.建物の相続税評価額が約2分の1以下になる

建物の相続税評価額が著しく低いこともメリットです。かかった建築費(新築価格)の約1/2以下になるので大きな節税効果があります。
例えば一億円で建てた建物の評価額は5,000万円以下になるわけです。
その一億円を現金で持っていた場合、当然「一億円」の価値として評価されますが、一億円で建てた建物はその1/2以下の額で評価されるのです。

3.建物が貸家であれば評価額が更に3割減額

上記2の建物の相続税評価額の減額はアパートであろうと自宅であろうと同じですが、「貸家」であることで、建物の評価額はさらに3割減額されます。ただし、「貸家」の状態でなければならないので、空室や自分が居住する分の減額はありません。

更地に比べると固定資産税が1/5に

今現在、更地や駐車場として保有している土地の固定資産税・地方計画税が、建物を建てることで約1/5になることも覚えておいてください。固定資産税などは、アパートを含む住宅の敷地である住宅用地と非住宅用地では、税額が大きく変わるからです。

アパート経営による節税効果は絶大です。しかし、今回お伝えしたように「節税できるか?」だけでなく、相続が起こった後のことまで考えることが何より大切です。
場所によってはアパートには向かず、他の利用に適していることもあります。他人任せにせず、自分の目で確認することをおすすめします。

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