【地主さんの実例】底地売却で相続にむけた資産整理に成功
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円満かつスムーズな遺産相続を実現するために大切なのが、生前からの計画的な準備です。では、底地をお持ちの方は、相続に向けてどのような準備ができるのでしょうか。そこで今回は、底地を売却して資産整理と、円満な相続への道筋づくりができたケースをご紹介します。
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目次
数多くの底地を所有する佐々木信吾さんの相続対策
今回ご紹介するのは、横浜市在住で底地を所有する佐々木信吾さん(仮名)のお話です。
佐々木信吾さんのお宅は、立派な門構えの日本家屋です。近くにまとまった底地があるようなので、その底地の整理について提案したいと思い、訪問することにしました。
昔から代々続く地主の家系で、地域に貢献してきた佐々木さん
事前にお電話をした際、信吾さんはまるで大工の棟梁のような威勢のいいべらんめえ調の話し方で、頑固そうだなという印象を持っていました。土地の売却の話など持ち出したらきっと怒られるだろうなと少し躊躇しましたが、思い切って呼び鈴を押しました。
「こんにちは!」
「はい、どうぞ」
玄関に出てこられたのは上品なおばあさん。奥様のようです。
「先日お電話させていただきましたとおり、ご所有されている不動産について、有利なご提案ができるのではないかと思いましてお訪ねしました」
訪問の趣旨を伝えたうえで世間話をしながら、佐々木家の事情をお聞きしました。
「ご立派なお宅ですね。向かいの駐車場も佐々木さんが持っておられるのですか?」
「はい、この辺一帯、昔から代々私どもの土地なのですが、娘たちは別に住んでいますので、空いている土地も多いんです。もう少し先の公園の土地も私どものものです。何しろ古くから住んでおりますので、選挙のときなども応援を頼まれたり、この歳になってもいろいろとあるんですよ」
「底地を孫に譲りたい」と希望するも、孫は「土地なんて要らない」
「失礼ですが、おいくつでいらっしゃるのですか?」
「私は86、主人は91になります」
「はー、お若いですね。でも、ご当主として土地を管理していくのは、たいへんではないですか。これから土地をどうされるか、そろそろお考えなのでしょうね」
「そうね、足腰が弱ってしまって、本当は外に出るのも億劫なんです。ただ、土地は貸していて、今のところほとんど手がかかりません。それに、私どもは娘2人で長女はお嫁に行き、次女はいまだに独身なものですから正式な跡継ぎがおりません。
長女のところに1人男の孫がおりましてね、主人は孫に譲りたいと言っているのですが、本人は“要らない”なんて申します。『土地なんか要らないから現金にしてくれ』なんて、最近の若い者はまったくご先祖様の土地をなんと思っていることか……」
底地相続について、家族内での意見は対立
どうやら不動産の相続について、まだご家族で意見がまとまっていないようです。借地はアパートや貸家と違って、地主さんの管理の手間はほとんどかかりません。それで、高齢のご夫婦でも自分たちだけで管理できるのです。
そこへご主人登場です。高齢の割に背が高く、がっしりとした体格の方です。
「わざわざ来ていただいて申し訳ないが、土地を売るつもりはないからね。何度来てもらっても無駄足だよ」
耳が遠いせいか大きな声で、電話の様子から想像していたとおり、頑固そうな印象です。
「いま奥様とお話させていただきました。お孫さんに譲ろうとお考えだそうですね。一度ご一緒にお話をお聞かせいただけませんか。私どもに売ってほしいということでなく、きっと皆さんにとって良いご提案ができると思いますよ」
佐々木さんのご家族間の考えの食い違いについて一端をお聴きすることができたので、その日はご主人にご挨拶をして帰りました。
底地の相続についてお孫さんと話をするも・・・
それからも何度かお電話でお話するうち、佐々木さんの不動産の状況がわかってきました。自宅の近くに約500坪の底地を保有していて、11人の借地人さんがお住まいです。地代は銀行振込と信金の口座振替で集金しておられ、借地人さんとの直接の行き来はありません。
次の訪問は、週末に長女の直子さんとお孫さんの宏さんが来られるタイミングに合わせてうかがいました。宏さんは30歳で会社員です。
底地の相続をめぐり、佐々木さんと孫の意見は真っ向から対立
「前から言っているように、私が死んだら佐々木家の家と土地をすべて宏に譲ろうと思っているんだよ。そのためにきちんと準備をしておきたいと思って、今日はコンサル会社の人にも来てもらった。それでいいね」
「おじいちゃん、僕は借地なんかもらっても困るんだよ。もらったものを売るのは気が引けるし、かといって持っているのも面倒だし、おじいちゃんが売ってお金にしてから分けてもらえないかな。それならお母さんだって分けてもらえるわけだし、お母さんもそのほうがうれしいでしょう」
おーっ、びっくり。なかなかハッキリおっしゃるお孫さんです。最初から険悪な雰囲気になってきました。
「何ということを言うんだ! ご先祖様からの大切な土地だ。絶対に売らん!」
うわっ。信吾さんの雷が落ちました。
「大した地代ももらえないのに、地主なんてやってられるか。売ってしまえばいいんだ!」
うおっ。おじいさんとお孫さんの戦いが勃発か。
「まあまあ、宏もお父さんも落ち着いて。今すぐそんなこと決めなくてもいいじゃないの。ゆっくり考えましょうよ」
娘の直子さんが間に入ってなだめます。
「ごめんなさいね。いつもこんな感じで話が進まないんですよ。息子はうちの背景や父の思いなんてお構いなしですから、父も意固地になってしまって……」
コミュニケーションを深めるうちに、お互いを理解し始めた2人
それから何度か、ご家族で集まる機会にご一緒させていただきました。
佐々木家の歴史や信吾さんの若いころの地元の様子など、昔話をいろいろお聞きするうち、地主さんとして土地を守り、地域に貢献してきたという信吾さんの誇りを、宏さんも理解されるようになりました。
信吾さんのほうも、日本経済が成熟したいま、宏さんのような若い世代は思うように給料が伸びず、苦労しているという現実がわかってきたようです。おじいさんに対して敬意を払うようになったお孫さんの宏さんの様子をみて、信吾さんの態度が変わってきました。
話し合える関係ができたところで、私は底地の収益性の低さ、相続が発生したときの相続税負担の重さについて説明しました。
底地相続で予想される問題を知り、「絶対に売らない」と言っていた佐々木さんの態度に変化が
佐々木さんが所有していた底地は約500坪、その時価は坪あたり約100万円です。
路線価が時価の8割とすると更地の場合の相続税評価額は、80万円✕500坪=4億円。
借地権割合が60%なので、底地の評価はその40%、約1億6,000万円となります。
それに対して、毎月の地代は坪あたり600円。
500坪の底地から得られる毎月の地代収入はわずか30万円しかありません。
固定資産税が月割にして約7万円かかっていますから、粗利で月23万円ほど、年間約276万円です。
1億6,000万円の相続税評価額に対して、利益が年間約276万円というのは、割に合いません。
管理の手間がかからず、地代収入が自動的に振り込まれてくるだけなので、相続が起こるまでは気付きにくいかもしれません。しかし、底地を保有していることの問題はまさにこの「低収益高評価」という点なのです。
後で聞いた話ですが、信吾さんは「絶対に売らない」と主張しつつも、実は、大きな収入もなく煩わしいだけの底地をお孫さんに引き継がせていいのだろうかという葛藤を抱えていたそうです。
底地は煩わしいだけでなく、相続では非常に不利になるとわかって、信吾さんは底地を売却することに決めました。売買に必要な土地の測量、借地人さんへの説明などすべて私が担当し、最初の訪問から半年ほどですべて完了しました。
疎遠になっていた借地人さんからも「ありがとう」と言われ
取引が完了したとき、直子さんから、「実は10年ほど前から話がでていて、やっと売却することができました。ありがとうございました」と言われ、お役に立ててよかったと、とてもうれしく思いました。
さらに後日談ですが、頑固な信吾さんからこんなメッセージもいただきました。
「何もかもやってもらってありがとう。実はね、借地人さんが菓子折を持って『これまでありがとうございました』とお礼に来たんだよ。最近はまったく付き合いもなかったので、あれには本当に驚いた。お宅がきちんと間に入ってくれたおかげだね。本当にありがとう」
備えあれば憂いなし!底地の相続
底地の相続では、今回ご紹介したように、収益性の低さと相続税の負担額の重さが問題になります。受け継ぐ人にとっては、底地は「もらって嬉しい財産」ではない可能性があるのです。
大切なのは、十分なコミュニケーションです。底地をお持ちの方は、来るべき相続にむけて家族で話し合う機会をもうけ、お互いの意思をきちんと確認しておくことをおすすめします。
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