北側斜線制限と日影規制~土地活用の基礎知識~ 用途地域との関係は?

2018.11.30

建物を建てる時には、場所によって、さまざまな制限が存在することをご存知でしょうか。

その1つが「高さ制限」で、建物の面する道路や隣接地の日当たり・通風を確保するために、建物の高さの上限を定めています。高さ制限にはいくつかの種類があり、どの制限が適用されるかは、都市計画法で区分される「用途地域」などによって決まります。

今回は、「高さ制限」の中から、住宅エリアで新築するときに関わることの多い「北側斜線制限」と「日影規制」についてわかりやすくご紹介し、あわせて「用途地域」についてもご説明します。
北側斜線制限,日影規制

北側に位置する建物の日当たりを守る北側斜線制限

北側斜線制限(きたがわしゃせんせいげん)とは、建物を建てるとき、自分の建物の北側に位置する建物が、南からの日当たりを確保できるよう配慮したルールです。

北側斜線制限は「第一種・第二種低層住居専用地域」「第一種・第二種中高層住居専用地域」「田園住居地域」で適用される

北側斜線制限が適用されるのは、「第一種・第二種低層住居専用地域」「第一種・第二種中高層住居専用地域」そして「田園住居地域」において建築するときです。なお、それぞれの地域については後ほど、北側斜線制限と日影規制を理解するために知っておきたい「用途地域」とはで詳しくご説明します。

北側斜線規制が適用されると建物の高さはどうなる?

北側斜線規制が適用されると、真北方向にある敷地の境界線から垂直に5mまたは10m(※)上がったところから、一定の傾斜(縦:横=1.25:1)をつけて線(北側斜線)を引き、この斜線の内側で建物を建てることになります。

※低層住居専用地域で5m、中高層住居専用地域で10m
北側隣地との境界線
北側斜線制限を目にする機会は意外に多いものです。例えば、住宅地で屋根に傾斜のついた建物を見かけたことのある人もいるでしょう。あの傾斜は、デザインのためにつけられているのではなく、多くの場合、隣地への日当たりを確保するためのものです。また、マンションの北側が階段状にバルコニーになっているのも、北側斜線制限に配慮したものになります。北側斜線制限は、実は身近なものであることがわかります。

北側の隣接地の状況によっては、北側斜線制限の緩和措置が認められることも

北側斜線制限は、北側の土地の日当たりを確保するためのもの。そこで、「北側の土地は日当たりが良い」「北側の土地の日当たりをさほど気にする必要がない」などの状況があれば、条件が緩和され、通常よりも少し高い建物を建てられる緩和措置があります。

具体的には、自宅の敷地の地盤が北側の隣地より1m以上低い場合や、敷地の北側または北側の面する道路の反対側が川などに接する場合です。北側の隣地が自宅よりも高ければ、それだけ日当たりが確保しやすいということです。また、水面に建物を建てることはないので、水面の日当たりを心配する必要性はありません。

では続いて、もう1種類の高さ制限である「日影規制」をご説明します。

「マンションが建ったせいで日中ずっと日陰に」そんな事態を防ぐ日影規制

マンションが立ち並ぶ
日影規制(ひかげきせい・にちえいきせい)とは、マンションなどの中高層(※)建築物を建てるとき、周辺の住民の日当たりを確保するため、周辺の敷地が日影となる時間を一定以下に抑えるように定めたものです。日影になる時間の上限を定めることで、結果的に、建物の高さを制限することになります。

※対象となる建物の種類は用途地域によっても異なります。例えば、第一種・第二種低層住居専用地域では、軒の高さが7mを超える建築物や地上3階建ての建築物が日影規制の対象です。

日影規制が適用されるのは「住居系」の用途地域で条例がある場合

日影規制が適用されるのはおもに、第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域といった「住居系の地域」で、かつ、都道府県や市区町村が日影規制に関する条例を定めている場合のみです。

日影規制と北側斜線制限の両方が設定されていたらどうなるの?

日影規制の設定される可能性がある第1種低層住居専用地域や第2種低層住居専用地域は、北側斜線制限の適用されるエリアでもあります。つまり、「家を建てようと思ったら、北側斜線制限と日影規制の両方が関わる土地だった」ということが起こりえますが、この場合は、より制限が厳しい方にしたがって建築することになります。

日影規制の具体的な内容は自治体によって異なっている

日影規制の具体的な規制内容は、地方ごとの気候や風土、日照時間などに合わせて、各自治体によって定められています。お住まいの地域の日影規制を確認するには、管轄する役所に問い合わせると良いでしょう。

北側斜線制限と日影規制を理解するために知っておきたい「用途地域」とは

北側斜線制限や日影規制の適用には「用途地域」が大きく関わっているため、両者を正しく理解するためには、「用途地域」についても知る必要があります。
都市中心部

都市計画法によって定められている用途地域

用途地域とは、都市計画法によって定められた「市街化区域」をその地域の土地の使用目的にあわせて13個に分類したもののこと。用途地域を設けることで、同じエリアの中には似たような用途の建物が集まり、例えば「閑静な住宅地のど真ん中に突然、高層ビルが建設される」といったことも防いでいるのです。

なお、市街化区域については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

関連コラム

【区域区分】市街化調整区域と市街化調整区域外:『土地の固定資産税・相続税は利用区分や地目によって金額が変わるって本当?』

13個の用途地域は以下の表の通りで、住環境が優先される「住居系」、買い物や遊びに使える施設を建設できる「商業系」、工場を建設できる「工業系」の3グループに分けられます。この中でも、北側斜線制限と日影規制に関係するのはおもに「住居系」地域です。

住宅地域等の区別

全部で8つある「住居系地域」、それぞれどう違うの?

住居系地域とは、良好な住環境が優先される地域で、基本的に大きな工場や商業施設は建てられません。全部で8つあるうち、(1)がもっとも住環境を優先した、住宅以外の建設が認められづらい地域で、(8)に近づくほど、住宅以外の建物も建てられるようになっていきます。では、それぞれどんなエリアなのか詳しく見ていきましょう。

(1)第一種低層住居専用地域

低層住居専用地域は、2階建て程度の戸建てや低層マンションが建ち並ぶ地域のことで、建築可能な住居の高さは「10m(地域によっては12m)まで」と定められています。

中でも第一種低層住居専用地域は、住宅以外には、ごく小規模な店舗や、小・中学校、診療所などしか建築できません。イメージとしては「閑静な住宅地」といったところです。

(2)第二種低層住居専用地域

第二種低層住居専用地域では、第一種に比べて若干規制が緩和されています。たとえば、2階建て以下で延べ床面積(※)が150㎡以下の小規模な店舗であれば、コンビニや飲食店の建設も可能です。その他、福祉施設や公衆浴場、診療所など、公益上必要な建築物の建築も認められています。

※延べ床面積(のべゆかめんせき):建物における、各フロアの面積の合計。延べ面積と呼ぶことも。
住宅街

(3)第一種中高層住居専用地域

中高層住居専用地域は、一般に3階建て以上のマンションが建ち並ぶ地域で、住宅の場合、建物の高さに制限はありません。

第一種中高層住居専用地域では、住宅以外に建てられるのは、学校などの教育施設や病院で、店舗も、延べ床面積が500㎡以内かつ2階までの建物であれば建築可能です。マンションが多く、日常の買い物に便利な商業施設は増えますが、大型店舗やオフィスビルは立てられないため、活気はありつつも比較的静かな住環境です。

(4)第二種中高層住居専用地域

第一種中高層住居専用地域で可能な建物に加えて、延べ床面積1500㎡以下、かつ2階建て以内の店舗が建てられるのが第二種中高層住居専用地域です。中規模の商業施設が建設できるので、生活利便性も高くなります。

中心部のマンション群

(5)第一種住居地域

第一種住居地域では住宅以外の建物がさらに建設しやすくなり、具体的には、延べ床面積3000㎡までの店舗や事務所、ホテル、ボーリング場・バッティング練習場などのスポーツ施設が建てられます。大規模なマンションや店舗も建ちならび、人の集まるエリアです。

(6)第二種住居地域

第二種住居地域では、ここまでで上げたものに加えて、マージャン店、パチンコ店、カラオケボックス等も建てられます。「住居地域」とはついているものの、かなりの用途の建物が建てられる状態で、第一種住居地域よりもさらににぎやかになります。
繁華街

(7)準住居地域

準住居地域は国道や県道などの幹線道路沿いに多く、車庫や倉庫、作業場の床面積が150㎡以下の自動車修理工場、客席部分200㎡未満のミニシアターなどが建てられます。住居系地域の中では、建物の許容範囲がもっとも広くなっています。

(8)田園住居地域

田園住居地域は、2022年に生産緑地の放出が予想される中、都市部での農地と宅地の共存を目的に2018年に新設された用途地域です。田園住居地域で建てられる建物の制限は、(1)第一種の低層住居専用地域に近いものの、農業に必要な施設や、2階建て以下の農産物直売所や農家レストランも建てられるなど、やや規制が緩和されています。
郊外の住宅街

建物を建てるときは、「高さ」にも注意しよう

建物を建てるとき、土地オーナーさんはまず、建築主事(※1)か指定確認検査機関(※2)に「この場所にこういう建物を建ててよいか」という申請を提出しなければなりません。これを受けて、建築主事や指定確認検査機関は、以下のポイントを中心に現地調査を実施し、建物を建ててよいかどうか判断を下します。

  • 敷地には、どのような都市計画上の制限がかかっているか
  • 敷地が建築基準法上の道路に接しているか
  • 敷地が建物を建てるにあたって安全であるか

これらをクリアし、建築主事や指定確認検査機関が建物を建ててよい土地であると認めたら、次は「建物の高さ」に注意しましょう。屋根の形によっては、斜線制限に違反してしまうことがあるからです。

※1 建築主事(けんちくしゅじ):建築基準法に基づき、建物を建てる前の「建築確認」や、建物が完成した後の「完了検査」などを担う都道府県または市町村の職員。

※2 指定確認検査機関:国土交通省の指定を受け、建築に関する確認及び検査業務を行う民間機関。

以上のように、建物にはさまざまな制限が定められているので、建物を新築する際はご注意ください。

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