【ニュース解説】2024年4月相続登記の義務化スタート、まだ3人に2人が知らない現実!

2024年(令和6年)4月より、相続登記の義務化が施行されます。元々、相続で取得した不動産の相続登記はいままでは任意でした。今後は相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内の登記申請が必要となります。

正当な理由なく登録申請を怠った場合、10万以下の過料(国や公共団体が国民に課す金銭納付命令のことで、行政上の罰のこと)を科される可能性があります。

このように相続登記義務化の影響は大きいと予想される一方、2022年7月に法務省が実施した調査で、6割を超える人々が相続登記義務化についてよく知らないことが判明しました。このまま知らずに相続登記を怠ると、将来的に子や孫が相続する際に余計な負担が増えかねません。

そこで今回は、相続登記の義務化についてわかりやすく解説します。相続した不動産を所有する、または今後その予定がある方に必読の内容です。ぜひ最後までご覧ください。

相続登記義務化について、3人に2人がまだ知らない!

相続登記の義務化・遺産分割等に関する認知度等調査調査結果※法務省:相続登記の義務化・遺産分割等に関する認知度等調査調査結果の概要より引用

いよいよ2024年(令和6年)4月から施行される「相続登記の義務化」。この法律の施行により、これまでの相続のあり方が見直されるなど、大きな影響が予想されます。

しかし、法務省が発表した「相続登記の義務化について」の調査結果は以下の通りでした。

  • 「全く知らない」・・・43.1%
  • 「聞いたことはあるがよく知らない」・・・23.3%

なんと、約66%の人が相続登記の義務化について認知していないのです。

この制度が与える影響を考えると、いまだ3人に2人は知らないという調査結果は、衝撃的な数値と言えるのではないでしょうか。

さらに、今回の調査結果で気になるのが「知らない」と回答した年齢層です。

  • 40代・・・75%
  • 50代・・・72%

「相続」という言葉が念頭に入る年齢層ほど、相続登記の義務化を知らないという事実が浮かび上がります。

また、「今後、あなたが相続することになった場合、様々な相続の問題について、誰に相談すると思いますか」(複数回答)の問いに対しては以下の回答結果となりました。

  • 「親族・知り合い」・・・36.8%
  • 「市役所等の自治体」・・・32.8%
  • 「司法書士」・・・32.8%
  • 「弁護士・税理士・公認会計士」・・・30.1%

この結果を見ると、「知らない」と回答した割合が多いわりに、相談する人の割合は低いことがわかります。本来「相続登記」の専門家である「弁護士・税理士・公認会計士」の相談する割合が一番低いとうのも特徴的です。

以上、相続登記について問題(危機)意識のまだまだ低い現実が、如実にわかる調査結果となっています。

◆参考資料

新制度の認知度調査を実施(令和4年7月)

相続登記が義務化された背景

相続登記が義務化された背景そもそも、相続登記とは相続により不動産を取得した時に、不動産名義を被相続人から相続人へ不動産名義を変更する一連の手続きのことです。この相続登記は、いままで登記するかしないかは任意であり、その判断は相続人の判断に委ねられていました。

その結果、相続した不動産が利用価値の低い場合など、相続人が固定資産税の負担を回避したり、土地管理の煩わしさをきらい相続登記せずそのまま相続して放置するケースが全国で多発してしまいました。

国の調査によると、保管するすべての登記簿のうち2割は「所有者不明土地」であることが明らかになっています。そして、所有者不明土地のうち、3分の1が転居など住所変更によるもので、残り3分の2はすでに亡くなって人の名義によるものでした。

こうして、相続したものの相続登記しないまま不動産が放置され続け、相続の世代交代がすすむと、法定相続人はネズミ講式に増えていくことになります。

こうした深刻な状況を受け、国は2020年に土地基本法を改正、土地所有者の責務を明確にしました。※参照資料:改正土地基本法に基づく「土地基本方針」(新設)のポイント

それに伴い、関連する民法と不動産登記法等の法律が改正され、これまで義務のなかった不動産の相続登記が今後義務化されることになったのです。具体的には「相続による不動産取得を知ってから3年以内に登録申請」が義務付けられ、正当な理由なく申請義務を怠ると10万円以下の過料が科されます。この法律は過去の相続も義務化の対象になるので注意が必要です。

相続登記を先延ばしするとどうなる?

相続登記を先延ばしするとどうなる?相続登記が義務化され、その申請を怠れば過料が科されることはわかりました。

相続により取得した不動産を相続登記しないままでいると、実は過料以外にも様々なリスクがあります。以下、具体的に見ていきましょう。

その1:不動産の売却・担保設定ができない

相続登記を怠ると、被相続人の名義のまま不動産を売ったり、担保を設定したりできなくなります。仮に買い手が現れて、相続人と買い手との間で不動産の売買契約が結ばれても、登記上の所有者である被相続人から買い手に所有権の移転登記ができません。

不動産売買の取引を完了させるためには、相続登記をおこない、不動産の所有権を被相続人から相続人に移転させる必要があるのです。当然、相続により取得した不動産を担保に金融機関から融資を受けるためにも、相続登記による資産登録は不可欠です。

その2:相続の権利関係が複雑になり思わぬ負担増も

相続登記せず相続した不動産を放置したまま相続の世代交代がすすむと、権利関係が複雑になることも大きなリスクです。

例えば、相続する当事者となかなか連絡がつかない場合、登記を含めた相続の手続きができず、相続分を確定することが困難になります。

さらに、相続が2回以上重なると対象となる相続人が誰なのか、その調査だけでも時間と労力が相当かかります。相続の対象が増えれば、相続登記の手続き費用・手数料も高額になるでしょう。

相続の権利関係が複雑になり相続登記に時間がかかると、前項のように相続した不動産を売却したいと思っても、すぐに売ることができず、金銭的(経済的)な不利益を被ることもあり得ます。

こうして相続登記の義務を怠ると、当人だけではなく子や孫の代にも思わぬ負担・不利益を生じる可能性に注意が必要です。

その3:「代位登記」されてしまう

代位登録とは、債権者が自己の債権を保全するため、民法第423条の規定により、債務者の有する登記申請権を代位行使して登記申請することを指します。

例えば、複数いる相続人の中に債務者がいて借金を返済しないと不動産を差し押さえされてしまう可能性があります。債権者は自らの債権を保全するため、相続登記していない不動産を相続人に代わり「代位登録」することで、不動産の差し押さえができるのです。

このように、しかるべきタイミングで相続登記を行わないと、本来相続できる不動産を「代位登録」されてしまうリスクもあります。

その4:「時効取得」されてしまう

時効取得とは、一定の期間、ある要件を満たした場合において、そのまま所有権等を取得できることを指します。

相続取得したものの相続登記していない土地を第三者が不法占拠している場合であっても、その占有が暴行・脅迫などの違法行為を伴わない平穏・公然な占有であれば、時効取得が認められる可能性もあるのです。

不動産の登記名義人が元の被相続人のままでは、相続人はその不動産の権利関係を証明できません。無断占有者はそのまま「時効取得」を理由に登録申請することが可能になります。

本来管理するべき不動産をしっかりと管理していないと、不法占拠者に不当に取得されてしまうこともあり得る「時効取得」。とくに利用頻度の少ない別荘など管理の目が届かない物件は注意が必要です。

不法占拠者が時効取得の要件を満たしてしまった場合、不法占拠者がその別荘等の所有権を取得してしまう恐れがあります。定期的に物件を見て回るなど、適切に管理することが重要です。

その5:相続人の認知症発症のリスク

相続登記せずそのまま放置していれば、いずれ相続人も高齢化していきます。相続人が高齢化すれば、認知症発症のリスクも考慮する必要があるでしょう。

相続人が認知症を発症し相続の判断能力がなくなれば、遺産分割協議はすべて無効になります(相続登記もできなくなる)。

成人後見人をつければその限りではありませんが、家族以外の専門家が後見人として選任されるケースが近年多くなっています。そうなると、相続の手続きは手間や時間もかかり、思うように遺産相続協議は進まない可能性もあります。

その6:建物を修繕できず周囲に被害も

登記上の所有者が死亡しているにもかかわらず、そのまま登記変更せず放置したままでいると、建物の修繕工事すら難しくなるケースもあり得ます。

修繕できず長年放置することで建物が荒廃し、最悪の場合は建物が倒壊したり、植木の枝葉が散乱するなどして、近隣住民に損害を与えるトラブルも少なくありません。

住宅街など人口密度が高い地域では、隣家の庭木の手入れが十分に行き届いておらず、敷地内で被害が発生してしまうこともよくあります。

相続した土地を疎遠に、管理不全でそのまま放置しておくと、やがて原状回復要求や損害賠償請求されてしまうことも十分あり得る話です。

相続登記義務化までにやるべきこと

相続登記義務化までにやるべきことここまで見てきた通り、いままでのように相続登記をしないまま、相続した不動産を放置するリスクはかなり高いと言えるでしょう。

本項では相続登記義務化にあたり何から準備すればいいか、大切なポイントを解説していきます。

その1:保有する不動産をリストアップ

まずは保有する不動産をすべて洗い出すことから始めましょう。法務局で登記簿謄本を取り、名義や住所など現在の所有関係をチェックします。そして、登記簿上の住所が現住所と違う場合は、すみやかに住所変更登記の手続きを行うことが重要です。

その2:必要書類の準備

保有する不動産のリストアップができたら、次は「遺言書」などの必要書類の整理・準備をしましょう。「遺産分割協議書」を作成する場合は、不動産をどうやって相続するのかを記載し、相続人全員の実印をもらい、全員分の「印鑑登録証明書」も必要になります。

さらに、亡くなった人の戸籍謄本、住民票の除票、固定資産評価証明書を用意して「登記申請書」を書きましょう。

その3:そして、最後に相続登記

相続人の内、誰か一人が代表して相続人全員共有の法定相続登記(共有名義)をする場合は、代表者はほかの相続人分の登記費用を負担する必要があります。

後日、遺産分割協議書が成立して内容を修正する場合は、その分労力も追加の費用がかかります。どのような形で相続登記するかについては事前によく相談して、決めることが肝要です。

まとめ:早めの準備と対策を!

今回は「相続登記義務化」について解説しました。相続により取得した不動産を、そのまま相続登記を先延ばしにするリスクについて、ご理解いただけたのではないでしょうか。

最後に、あらためて内容をまとめてみましょう。

  1. 法改正により今後相続登記が義務化される
  2. 相続登記義務化は2024年(令和6年)より施行(開始)される
  3. 相続登記の申請を怠ると10万以下の過料の対象となる
  4. 相続登記を先延ばしすると、不動産の利用・活用に様々な支障が出る

以上、相続登記の義務化の問題は相続人である当事者だけの問題ではなく、ひいては子・孫の代まで負担が増すことを肝に銘じておきたいものです。

とはいえ、いままで相続登記は任意であり、長年放置している方も多いかと思います。そのため、今回の相続登記の義務化に伴い大変な労力がかかる可能性もあるでしょう。まずは早めの準備と対策をおすすめします。

◆関連記事

【事例で見る相続トラブル】相続登記 

底地のトラブルでお悩みのときは「ニーズ・プラス」にお任せください!!

ニーズ・プラスは、東京や千葉、埼玉、神奈川を中心に、数多くの底地物件を取り扱い、豊富な実績とノウハウを有しています。

当社が地主さんと借地人さんの間を取り持ち、底地にまつわる多様な知識を生かしながら、複雑化してしまった底地トラブルをスムーズに解決へと導きます。

お客様ひとりひとりとじっくり向き合い、お客様からご要望をお伺いした上で、内容に沿った最善の解決策をご提案いたします。

当社をご利用いただいたお客様からは、「トラブルを円満に解決できてよかった」「難しい取引も、すべてお任せできて安心できた」などと喜ばれております。

底地問題についてのお悩みは、ニーズ・プラスへご相談ください。

TOP