【借地権の相続】よくあるトラブルパターンと対策について徹底解説!

借地権の相続

相続は争族と称されることもあるくらいトラブルが生じやすいものです。さらに、借地権付き土地の相続は、家族など相続人同士だけではなく地主さんの権利についても配慮が必要になるため、対応がより複雑になる可能性があります。

大事な資産をきちんと引き継ぐために、借地権について正しく理解しておくことが重要です。今回は、借地権を相続した、あるいは今後相続する予定の借地人さん向けに、事前におさえておくべきトラブルのパターンと対策について解説していきます。ぜひ、最後までご覧ください。

借地権とは何か?

借地権とは何か

最初に借地権について簡単に整理して説明します。

借地権には大きくわけて、以下3種類に分類できます。
借地権の種類により、契約期間および更新期間の年限が異なるので注意が必要です。

1)普通借地権
普通借地権とは、契約更新ができる借地権です。 普通借地権の存続期間は30年が最低期間となり、当事者が契約で30年以上の存続期間を定めた場合にはその期間となります(借地借家法第3条)。逆に30年より短い期間を設定した場合、その契約期間は無効です(借地借家法第9条)。

更新後は最初の更新時は20年以上、2回目以降の更新時は10年以上と定められています。

2)定期借地権
定期借地権とは、契約期間に定めがある借地権です。契約であらかじめ設定した契約期間(一般的には50年)をもって借地関係が終了し、その後の更新はありません。定期借地権は「建物買取請求権」も付与されないため、地主さんにとって有利な借地権ともいえます。

◆関連記事:「建物買取請求権」について詳しく解説しました
【弁護士監修】地主さん必読!建物買取請求権とは

3)旧借地権
借地権に適用される法律が、平成4年8月に「新借地借家法」として施行されました。 それ以前に借地契約を結んでいるものは「旧借地法」が適用されます。旧借地権とは、この「旧借地法」が適用される借地権のことです。一般的に借地権といえば、ほとんどこの旧借地権のことをいいます(※注:平成4年8月以降に契約更新されても「旧借地法」が適用)

旧借地権の契約期間は、建物の種類(以下2種類)により分類されます。

3-1)堅固な建物(RC造り・重量鉄骨造り等)
・契約当初の期間:30年以上(契約で定めがない場合は30年以上~60年未満)
・更新後の期間:30年以上(契約で定めがない場合は30年)

3-2)非堅固な建物(木造住宅)
・契約当初の期間:20年以上
・更新後の期間:30年以上(契約で定めがない場合は30年)

旧借地法は、ひとたび土地を貸してしまうと取り戻すのが難しく、地主様にとっては不利な法律とも言われています。

以上、借地権について簡単に整理しました。

対象となる借地権の賃貸借契約が、現行の「借地借家法」が適用されるのか、あるいは「旧借家法」が適用されるのか確認するとよいでしょう。

借地権は相続できるのか?

借地権は相続できるのか?

結論から言いますと、たとえ借りた土地(借地権)であっても、相続財産の対象となるので相続が可能です。

よくあるご相談で、借地に建てた家に住んでいた父親が亡くなり、その家を相続したところ、地主さんから「一代限りの約束で貸してたので、住んでいる家から退去してほしい」と言われるケースがあります。

この場合、借地権は相続の対象なので契約期間は存続しますし、地主さんに明け渡す必要はありません。また、借地権を相続するにあたって地主さんの承諾も必要ありません。

借地権の相続は権利関係が複雑なため、トラブルが多くあります。一体どんなトラブルがあるのでしょうか。次に借地権の相続でよくあるトラブルとその対策について解説していきます。

借地権の相続でよくあるトラブルと解決策

借地権の相続でよくあるトラブルと解決策

借地権の相続トラブルは、兄弟など親族間だけではなく、地主さんとの間でも起こりえます。また、トラブルの種類もさまざまです。

ここからは借地権の相続にまつわるトラブルと対応する方法について解説していきます。

ケース1:「立ち退き」を要求される

地主さんから借地権の相続するタイミングで、立ち退きを要求されることがあります。あるいは、借地権の存続期間中に地主さんが土地を売却し地主さんが交代し、新しい地主さんから立ち退きを求められることもあるでしょう。

いずれの場合も、地主さんが立ち退きを請求するには法的な「正当事由」が必要です。「借地権を相続したから」「新しい地主さんへ売却したから」などの場合は立ち退きを請求する正当事由にはなりません。したがって、立ち退きに応じる必要はありません。

◆関連記事:
【疑問解消!】立退きに必要な「正当事由」とは?分かりやすく解説します

ケース2:借地契約の更新を拒否さ、借地権の返還を求められた

借地権を相続したものの、契約期間満了を機に、地主さんから契約更新を拒否されるケースもあります。この場合、借地上に建物が存在している限り契約期間を満了しても契約は更新されるため、借地を返還する必要はありません(借地借家法第5条)。

※参考:借地借家法(第5条)
借地権の存続期間が満了する従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。

地主さんが借地契約の更新を拒絶するには「正当事由」が必要です。契約期間の満了は正当事由にはなりません。「正当事由」として認められるかどうかは、厳しい判断基準があります。借地権を相続したにもかかわらず契約更新を拒否された場合、「正当事由」の有無について、先方へしっかり確認するようにしましょう。

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【疑問解消!】立退きに必要な「正当事由」とは?分かりやすく解説します

ケース3:地代の値上げを要求(増額請求)される

借地権の相続トラブルでよくあるのが、地主さんが「借地権の相続を契機に地代を値上げしたい」という要求をしてくるケースです。

借地権の相続は今までと同じ条件で継承するのが原則なので、相続したからという理由で、地代の要求に応じる必要はありません。

ただし、賃貸借契約書の中で地代の値上げ(増額請求)についての取り決めがあらかじめ決まっているのであれば、その内容にもとづいて相談や交渉する必要があります。

地代の値上げは地主さんもいくらかの値段で気持ちよく合意してくれればいいのですが、交渉がなかなかまとまらず、しぶしぶ(最終的に)合意に至る場合、その後の関係が微妙になるケースもよくあります。

地代を増額請求できる法律的な要件は以下の通りです(借地借家法第11条)。

※参考:借地借家法第11条
地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

この条文を簡単にまとめると、増額請求できる条件は以下の3点です。

  1. 土地の固定資産税・都市計画税の増減があったとき
  2. 地価の上昇または低下があったとき
  3. 近隣の似た土地における地代と比較して不相当な地代となっているとき

以上、借地人さんには地主さんの言われた通りの地代を支払う義務はありません。増額請求は、あくまで双方の合意のもとで、地代の増額が決まるのです。

もし地代の値上げ自体や値上げされた金額に納得ができないのであれば、話し合いを実施して、双方の合意点を探しましょう。話し合いで結論が出なければ調停、それでも決まらなければ訴訟という順序で最終的な地代が決まります。

交渉の経過次第では、地主が「値上げした地代でなければ受け取らない」と受取拒否する場合もあるでしょう。その場合、地代は法務局の供託所に供託することで債務不履行とはならず借地契約解除を回避できます。

まず借地権を相続したら、地代の増額について、直近の賃貸借契約書の内容を確認してみてください。

ケース4:地主さんから名義変更料や更新料(承諾料)の支払いを要求 される

借地権を相続すると、地主さんから「借地権を相続するにあたって名義変更料(承諾料)・借地権の更新料を支払ってほしい」と要求されることがあります。

実際、更新料の金額交渉では地主さんが高額提示から入り、なかなか合意できず、それが原因で地主さんに根に持たれてしまうケースもあるようです。

しかし借地権の相続にあたり、名義変更料(承諾料)や借地権の更新料を支払う必要はありません。借地権の相続は(譲渡に該当せず)地主さんの承諾は必要ないのです。また、借地の相続にあたって、賃貸借契約書の名義を書き換える(作り直す)ことは法的には必要ありませんが、相続した際は、できるだけ早い段階で書き換えたほうがいいでしょう。いずれ借地権を売却したいと考えた時に取引を滞りなく進めるためです。

相続にあたり、地主さんの承諾は必要ありませんが、地主さんとの良好な関係を維持することはとても重要です。 地主さんが知らないうちに借地権者が変わっていたとなると、法的な義務はなかったとしても不信感を持たれかねません。借地権を相続したら、地主さんに報告だけはしておきましょう。

ケース5:地主さんが建物の建て替え(増改築)を拒否する

借地権の相続を機に、借地の上に建てた建物を増改築したと考える場合もあるでしょう。しかし、借地の上に建てた建物を増改築する場合は注意が必要です。まずは借地契約(賃貸借契約)の内容を確認してください。

なぜなら、契約で建物の建て替えや増改築をする際には、地主の承諾を取得すべき旨の特約が定められている場合が多くあるからです。一般的に、契約書の中で「地主の承諾なしに借地上の建物の建て替えを禁止し、建て替えなどをする場合には、事前に地主の承諾を必要とする」という文言が入っています。(これを「増改築禁止特約」いいます)

このような特約が存在し、かつ地主からの承諾が得られない場合には、承諾料などについて地主と交渉する必要があります。

建物の増改築の問題は、地主さんとの間で大きなトラブルに発展する可能性も高く、最悪、裁判になるケースもあります。

増改築する前に賃貸借契約書の内容をよく確認し、増改築の手続きをすすめてください。増改築特約の文言がない場合でも、念のため、増改築の施工前に地主さんに確認と許可をとっておいたほうがよいでしょう。

ケース6:地主さんが家の売却を許可しない

借地権を相続したものの、相続人は住む予定がない家の場合(例:実家を相続した場合など)、第三者へ売却することも可能です。借地上の建物を第三者に売却する場合、借地権もセットで譲渡することになります。

借地権を売却する場合、地主さんの承諾が必要かどうかは、相続した借地権が「地上権」と「賃貸権」のどちらであるかにより対応が変わるので注意が必要です。

そもそも借地権とは、他人の所有している土地を借りて、その土地を建物などを建てたりする権利のこと。この借地権は、さらに「地上権」と「賃貸借」という2つの権利に分類されます。地上権も賃貸借も、どちらも借地権の一種ですが、以下の点に違いがあります。

  • 地上権:地主さんの許諾がなくても、建物を貸したり、売却できる(担保設定も可)
  • 賃貸借:地主さんの許諾を得ないと、建物を貸したり、売却はできない

地上権は「物権」であり、物や権利を直接支配する権利の一種です。一方、賃貸借は 「債権」であり、ある特定の行為(住居を建てて住むこと)を請求できる権利です。

借地権を設定する際、地上権と賃借権のどちらにするかは、地主さんと借地人さんの合意の上で決められます。借地権を売却する前に、地主さんの承諾が必要かどうか、契約書の内容を確認するようにしましょう。

もし、設定された借地権が「賃借権」で地主さんの承諾が必要にもかかわらず、地主さんが第三者への譲渡を認めてくれない場合はどうすればよいのでしょうか。

地主さんの承諾を得ずに借地権を譲渡すると借地契約を解除される可能性があります。買主と話がまとまっていても絶対に取引を進めてはいけません。

借地権の売却を地主さんが承諾しない場合は、裁判所に地主の承諾に代わる許可(代諾許可)を求める申し立てを行います(借地借家法第19条)。

※参考:借地借家法第19条(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

詳しい対応については、弁護士や専門の不動産業者に相談するようにしてください。

ケース7:借地権の相続で兄弟同士が揉める

前述までの通り、借地権の相続は地主さんの間で揉めることもあれば、兄弟など親族間で揉めることが多いのが相続の特徴です。

親族間で、借地権の相続のトラブルでよくあるケースは「誰が借地権を相続するか」の問題です。一般的に借地権付き建物は遺産の中でも財産価値が高く、遺産の中でもかなりの割合を占めます。そのため、借地権を誰が相続するか、兄弟など親族間同士で揉めるケースが少なくありません。

どうしても親族間の遺産分割協議で話し合いがまとまらない場合は、遺産分割調停・審判を利用して、法的手続きによる解決を図ることになります。その際は弁護士など専門家に相談し、対応するようにしてください。

ケース8:借地権を共有相続してトラブルが発生する

借地権を共有相続できますが、多くはトラブルに発展します。

具体的なトラブルは以下の通りです。

  • 相続税は誰が払うのかで揉める
  • 一部の相続人が、地代や税金の負担分を支払わないで揉める
  • 建物の増改築、売却などをめぐって意見が合わず揉める
  • 借地権を売却するには相続人全員の同意せず揉める(例:母親は借地上の建物に住みたいのに長男は売却したい、建物を賃貸に出して家賃収入を得たい等)

借地権を共有すると、権利関係が複雑になりトラブルの火種になりがちです。また、相続人が亡くなって再び相続が発生すると借地権の名義人が増えていき、さらに権利関係が複雑になります。

以上の点から、借地権を相続する際には、なるべく共有名義ではなく単独名義で相続することをおすすめします。そうしなければ、トラブルを自分の子や孫にまで引き継いでしまう可能性もあるので注意しましょう。

ケース9:借地権の登記が不備で契約解除になることも

借地権を相続した場合には、必ず相続人が借地上の建物登記を行うようにしましょう。もし、借地上の建物の名義が相続人と違う場合(例:土地は本人で、建物は息子など)、無断譲渡や無断転貸と地主からみなされ土地賃貸借契約を解除される可能性もあるからです。

相続登記するかしないかの判断は、いままで相続人の任意でした。2024年(令和6年)4月より、相続登記義務化の法律が施行されます。相続登記の手続きは早めにすすめておきましょう。

◆関連記事:「相続登記の義務化」について
【ニュース解説】2024年4月相続登記の義務化スタート、まだ3人に2人が知らない現実!

まとめ

今回は借地権の相続にまつわるトラブル、およびその対策について解説しました。権利関係の複雑な借地権の相続はトラブルも多くなりがちです。トラブルになる前に事前に準備をしておくことが相続対策ではとても重要です。本コラムでは、特にご相談が多いトラブル事例をまとめました。ぜひ、ご参考にしてみてください。

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