【税理士監修】底地と借地権の等価交換とは|評価と手続きの基本を解説
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底地と借地権の等価交換は、地主と借地人がそれぞれ保有する権利を交換し、土地の所有形態を整理するための手法です。
現金のやり取りを伴わずに権利関係を一本化できるため、底地の共有状態を解消したい地主と、建替え・融資を進めたい借地人の双方にメリットがあります。
本記事では、等価交換の基本的な仕組みから、権利の評価方法、具体的な手続きの流れまでをわかりやすく解説します。
目次
底地と借地権の等価交換とは

底地・借地権の等価交換では、地主が持つ底地と、借地人が持つ借地権を、それぞれの評価額に基づいて交換します。
双方が保有する権利を調整できるため、地主は土地の完全所有権を得られ、借地人は土地の所有者として建替えや融資を進めやすくなるという利点があります。
底地の等価交換ストーリー【地主Aさんと借地人Bさん】
ある地主Aさんの土地には、借地人Bさんの住宅が建っており、長年にわたり借地契約が続いていました。
高齢になったAさんは考えました。
「管理の負担や将来の相続を見据えて、底地を整理したいな。」
一方でBさんはこのように考えていました。
「古くなった自宅を建替えたいけれど、借地のままでは金融機関の融資が受けにくい…。」
そこで双方は等価交換を選択。鑑定評価に基づき、Aさんは自宅の裏にあるBさん所有の小規模な借地権を取得し、Bさんは現在居住する建物の敷地を「完全所有権の土地」として取得します。
交換後、Aさんは取得した土地を売却して資金化し、Bさんは無担保で自由に建替えができるようになりました。
等価交換が選ばれる背景と目的
等価交換の目的には、底地と借地権が重なった状態のままでは、双方に不都合があるという事情があります。
地主は土地の所有者でありながら自由に利用できません。さらに底地は、売却価格も低く評価されるのが一般的です。
一方で、借地人も建替えや融資に制約が生じ、土地を完全に自分の資産として活用できないという問題を抱えています。
等価交換によって底地と借地権を交換すれば、権利関係を整理し土地の活用価値を最大化することが可能になるのです。
底地と借地を等価交換するときの評価方法

底地を等価交換するときは、地主・借地人のどちらかが一方的に得をしないよう、底地と借地権それぞれの価値を公平に評価することが重要です。
底地は土地の所有権でありながら、借地権が付着していることで利用・処分が制限されているため、更地と同じ価値では評価できません。
そのため「更地としての評価額」に「借地権割合」を掛け合わせて底地と借地権の価値を算出し、交換後も双方の取得資産が等しい価値となるよう調整します。
底地と借地権の評価額の算出方法
底地と借地権の評価額は、「更地としての評価額」を基準に割り振る方法が一般的です。
税務評価や鑑定評価で用いられる考え方では、借地権の価値は更地価額に借地権割合を乗じて求め、底地の価値はそこから残りの割合を充てて計算します。
具体的には、
底地=更地価額×(100%-借地権割合)
借地権=更地価額×借地権割合
となります。
更地の評価額が5,000万円、借地権割合が70%の場合、
底地の評価額:5,000万円 ×(100%-70%)=1,500万円
借地権の評価額:5,000万円 × 70%=3,500万円
です。
評価に使われる指標|借地権割合・路線価など

借地権割合は、国税庁が地域ごとに定めており、30%~90%の範囲で設定されています。
相続税や贈与税の計算にも使われ、国税庁の「路線価図」や「評価倍率表」で確認できます。
評価額の基準となる「更地価格」は、実勢価格や公示地価、路線価などを参考にし、当事者間で納得できる金額を設定します。
専門家による評価の重要性
円滑な等価交換を実現し、将来の紛争を防止するには、不動産コンサルティング会社や不動産鑑定士などの専門家が欠かせません。
底地は地代の水準や契約条件、地域性など多くの要素を踏まえる必要があるため、価格の算定が難しいのが実情です。
誤った評価は、交換後の資産価値の偏りや当事者間のトラブルにつながる可能性があります。
双方にとって納得度の高い等価交換を実現するため、経験豊富な専門家へ相談しましょう。
底地と借地の等価交換|手続きの流れ

底地の等価交換には、評価額の算定から合意形成、契約書作成、登記手続きといったステップがあります。
事前準備と当事者間の協議
等価交換を進めるには、地主と借地人、双方が合意することが前提になります。
権利関係が複雑な場合や複数人の共有者がいるケースでは、早い段階で情報を共有し、認識のズレをなくすことが大切です。
スムーズに合意を形成するためにも、準備の段階で不動産コンサルティング会社や弁護士などの専門家を交えましょう。
土地の分筆登記
等価交換する対象が確定したら「土地の分筆登記」を行います。
土地の分筆登記とは、1つの土地(筆)を複数の区画に分け、新たな土地として登記簿上に登録する手続きです。
相続・売買で一部だけを譲渡したいときや、土地を分割して開発したいときなどに行われます。
分筆することで、それぞれの土地が独立した「筆」として扱われ、面積や地目、所有者情報を明確にすることが可能です。
分筆後は別々の土地として売却・利用できるようになるため、権利関係の整理にも役立ちます。
所有権移転登記
分筆登記が完了したら、各土地の所有権を交換する「所有権移転登記」を行います。
等価交換では、取得した土地に合わせて、双方がそれぞれ所有権移転登記を行い、名義を入れ替えます。
登録免許税を納付した後、法務局に申請し、登記簿が書き換えられて初めて新たな所有関係が法的に確定します。
登記に必要なもの
・登記識別情報(旧:権利証)
・本人確認書類
・印鑑証明書
・固定資産評価証明書
・委任状 など
確定申告と必要書類
等価交換を行った翌年には、地主と借地人の双方が確定申告を行う必要があります。
固定資産の交換の特例(後述)を適用する場合、確定申告書と内訳書を税務署に提出しなければなりません。
確定申告を怠ると特例が適用されず、譲渡所得税が課税されてしまうため、注意しましょう。
底地の借地権の等価交換にかかる税金と特例制度

等価交換を安全に進めるには、どの税金が関係し、どの特例が使えるのかを事前に正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、具体的な事例と制度を解説します。
発生する税金の種類と計算方法
等価交換に伴い、以下の税金が発生します。
固定資産税・都市計画税
- 完全所有となった土地に対して毎年課税されます。
- 固定資産税=固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率)
- 都市計画税=固定資産税評価額 × 0.3%(自治体により異なる)
登録免許税
- 所有権移転登記時に課税されます。
- 土地の所有権移転登記:固定資産税評価額 × 2%
不動産取得税
- 土地や建物を取得した際に課税されます。
- 不動産取得税:固定資産税評価額 × 3~4%(時期・地域により異なる)
印紙税
- 交換契約書作成時に必要。
- 記載金額がない場合は200円、金額に応じて増額
【国税庁】固定資産の交換の特例とは
固定資産である土地や建物を同じ種類の資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例があり、これを固定資産の交換の特例といいます。
この特例の要件の一つに、交換する資産は互いに同じ種類の固定資産でなければならないとする要件があります。
同じ種類の固定資産の交換とは、例えば、土地と土地、建物と建物の交換のことです。
この場合、借地権は土地と同じ種類に含まれます。
したがって、地主が建物の敷地として貸している土地、いわゆる底地の一部とその土地を借りている人の借地権の一部との交換も、土地と土地との交換になり、その他の要件にも当てはまれば、固定資産の交換の特例の適用を受けることができます。

「固定資産の交換の特例」とは、土地と土地、建物と建物など同じ種類の固定資産を等価で交換した場合、譲渡所得税が課されない制度です。
この特例により、等価交換による税負担を大幅に軽減できます。
特例適用の要件と注意点
特例を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
・交換する資産がいずれも固定資産であること
・交換する資産が同じ種類(例:土地と土地)であること
・交換する資産を1年以上所有していたこと
・交換相手の資産も1年以上所有されていたこと
・交換後も同じ用途で使用すること
・交換する資産の価額差が高い方の20%以内であること
要件を満たさない場合や、交換差金(金銭授受)が発生した場合は譲渡所得税が課税されるため、十分に注意しましょう。
底地と借地権の等価交換|メリットとデメリット

次に、地主・借地人双方のメリット・デメリットを解説します。
地主さんのメリット
借地権が付いており、自由に使えなかった土地が「完全所有権の土地」へ変わるため、資産価値・流動性が向上します。
更地として売却できるようになり、担保価値も高まるため、将来的な活用の幅が拡大します。
権利関係を整理でき、借地人とのトラブルや調整負担から解放されるのもメリットです。
地主さんのデメリット
交換後に取得する土地が、希望どおりの形状・立地とは限らないリスクがあります。
評価額の算定には専門的判断が必要で、条件交渉に時間がかかることも。
交換に伴い、固定資産税評価や将来の相続対策に影響が出るため、事前のシミュレーションも欠かせません。
借地人さんのメリット
最大のメリットは、借地権付きの土地が「完全所有権の土地」に変わる点です。土地の権利関係が明確になるため資産価値が向上します。
また、借地権付きの土地が完全所有権の土地になることで、建替え・増改築・売却・融資などの際に生じていた制限がなくなり、自由度が大幅に向上します。
地主との長期的な契約関係や更新料・承諾料などの負担から解放され、相続時の懸念も軽減するでしょう。
借地人さんのデメリット
評価額に基づいて区画が決まるため、元の土地よりも使い勝手が変わる可能性があります。
また、評価額の算定や交換条件の調整には時間がかかり、専門家への依頼費や測量費用などの負担が生じることも。
さらに、交換により土地の価値や税務上の扱いが変わるため、将来的に相続税や固定資産税が増える可能性もあります。
【国税不服審判所】土地の交換に所得税が課されるか否かを争点とする事案
2回の土地交換について、所得税(譲渡所得)が課税されるかが争点となった事案があります。
請求人は「金銭の授受がない交換だから課税はされない」と主張しましたが、税法上では、土地の交換も“譲渡”とみなされ、値上がり益があれば課税対象となります。
さらに、交換で受け取った土地の価値=収入金額として扱いますが、その評価には、土地改良区が現地調査・周辺相場・農業収益などを基に決めた「評定価格」が合理的と判断されました。
審判所はこの評定価格で譲渡所得を再計算し、原処分より税額が低い部分については取り消したものの、課税そのものは妥当と認め、過少申告加算税も一部を除き適法と判断しました。
底地と借地の等価交換|注意点を解説

底地と借地権はそれぞれ特有の権利関係を伴うため、誤った判断が後々のトラブルにつながる可能性があります。
底地の等価交換を進めるときは、単に土地を入れ替えるだけではなく、評価方法や契約条件、税務、将来の利用計画など、多くの点に注意しましょう。
公平な等価交換をスムーズに実現するには、事前の準備と専門家のサポートが不可欠です。
分割割合や建物越境の問題
トラブルの原因になりやすいのが、分割割合です。評価額や面積について双方が納得できるよう、専門家の意見を参考にしましょう。
既存の建物が分割後の土地にまたがる場合、建物の一部解体や移設が必要になるケースもあります。
費用負担や手続きについて、事前に取り決めておきましょう。
手続き上の注意点
・分筆登記や所有権移転登記は正確に
・必要書類を漏れなく準備
・税金や諸費用の分担方法を事前に協議
・確定申告を忘れずに
底地の等価交換に専門家が不可欠な理由
底地の等価交換には、固定資産の交換特例を利用するための手続きを行う税理士、評価を行う土地家屋調査士、所有移転登記や分筆を行う土地家屋調査士、地主・借地人の調整を行う不動産コンサルティング会社など、さまざまな専門家が欠かせません。
円滑な取引のため、積極的に経験豊富な専門家へ相談しましょう。
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