家賃滞納、トラブルにならないための対処方法は?[弁護士監修コラム]

2020.09.15

先祖代々受け継いだ土地を大切に守ってきた地主さんの中には、アパートやマンションを経営していらっしゃる方も多いでしょう。
愛着のある土地を守りながら家賃収入を得られれば、「老後も安心」と思いきや、その管理は意外と大変なもの。特に家賃滞納による借主とのトラブルは、家賃収入減だけでなく、裁判費用や強制退去にかかる費用など負担も大きいのです。
では、家賃滞納トラブルを起こさないためにはどうしたらいいのでしょうか。今回はトラブルを未然に防ぐための対策と、それでも起こってしまったときの対処法についてお伝えします。

家賃滞納はどんなシチュエーションで起こるの?

一番多いのは、リストラで仕事を失ったり、ケガや病気で働けなくなったり、やむを得ない事情で家賃滞納しているケースです。
このような場合は、支払う意思はあっても、本当にやむを得ず支払えない状況であるため、大家さんは、数か月は待ってあげることも多いようです。

しかし、中には悪質なケースもあります。隣の音がうるさい、雨漏りがするなど、事実を誇張していろいろな理由をつけて払わなかったり、ギャンブルや買い物ですべてのお金を使い果たして家賃分が残っていなかったりと、とても納得はできない理由で家賃滞納している人もいるのです。
大家さんはどうにか解決したいけれど、糸口が見つからず、頭を抱えていることもあるでしょう。

家賃滞納が続いている。大家さんはどう対処したらいい?

事情がどうであれ、大家さんとしては半年、1年と家賃が支払われない状況では困ります。ではどのように対処したらいいのでしょうか。順を追ってご説明します。

1.家賃を支払うように催告をする

家賃滞納に気づいたら、まずは「家賃を支払うように」催告をします。口頭で行う場合もありますが、証拠を残すために内容証明郵便で書面にて、催告したほうがいいでしょう。

2.家賃が支払えない事情を確認する

家賃の滞納が続くからといって、いきなり住民に出て行ってもらえるわけではありません。そこに出て行ってもらうだけの理由があるかどうかが重要です。病気やリストラなど止むを得ない事情であっても、「お金が工面できる予定があるのか」「いつからなら払えそうなのか」確認しましょう。
この時点で、「連絡がとれない」「家にはいるが話し合いに応じない」のであれば、保証人への連絡を並行して行いながら、次のステップに進みます。
保証人は、家族や近しい方がなっていることが大半であるため、保証人を巻き込むことで裁判を起こさずに、早期解決することもあります。保証人も財産の差押えはされたくないからです。

3.家賃が3ヵ月分以上、支払われなかったら契約違反で賃貸契約を解除できる

3ヵ月分以上の家賃滞納があると、大家と借主間の「信頼関係は破壊」されており、賃貸借契約に違反している判断され、賃貸契約は解除できます。理由が止むを得ない事情であってもそれは同じです。
そのような事情で賃貸契約を解除したとしても、その間の家賃を請求する権利は当然残ります。

ここで注意したいのは、あくまでも「3ヵ月分」だということ。家賃が月10万円ならその3ヵ月分、合計30万円以上の滞納がないと「信頼関係が破壊されている」とまでは言えません。
例えば10万円の家賃全額は支払えないものの「半額の5万円」の入金がある場合は、6ヵ月間経たないと、賃貸契約を解除できるほどの契約違反とはならないということです。

4.内容証明で賃貸契約解除を通知する

実際に3ヵ月分以上の滞納があったら、内容証明郵便などを利用して、必ず証拠が残る方法で「賃貸借契約解除」の旨、通知しましょう。
内容証明を受け取ったのにもかかわらず退去してもらえない場合、「家賃の支払い」「部屋の明け渡し」を求める裁判を検討しなければなりません。裁判の末、最終的には「強制退去」「給与や不動産など財産の差押え」などに進みます。

裁判は、基本的には借主に対して行いますが、保証人に対しても一緒に提起できます。
家賃滞納は賃貸借契約違反ですから、裁判になれば、大家さんの主張が当然認められます。しかし、裁判を起こすと時間もお金もかかります。また裁判に勝訴しても、支払い能力のない借主から家賃を回収できるとは限らないので慎重に検討してください。
「部屋の明け渡しを拒まれ、次の入居者に入ってもらえない」「近隣住民に迷惑がかかっている」などの事情がある場合は、家賃回収が見込めず、裁判費用が上回ったとしても、部屋の明け渡しだけを目的として裁判をする大家さんもいらっしゃいます。

家賃滞納が続くなら、裁判を行い、最終的には「立ち退き」へ

催告しても家賃の支払いがなく、納得できる事情の説明もなければ、最終的には裁判を起こし、立ち退いてもらわねばなりません。判決が出たにもかかわらず、部屋を明け渡してもらえない場合は、強制執行をして退去させることになります。

とはいえ、大家さんの代理人として、弁護士でない者が立ち退き交渉をすると非弁行為となり、違法です。大家さんがご自身で立ち退き交渉をしたくない場合は、必ず弁護士に相談してください。もちろん弁護士費用はかかりますが必要経費です。
裁判所_家賃滞納、トラブルにならないための対処方法は?[弁護士監修コラム]

家賃滞納トラブル、裁判までの具体的な手順

裁判を起こすと決めたあとの具体的な手順を簡単にお伝えします。
まず、大家さん側が裁判所に訴訟を提起をします。原告は大家さん、被告は借主ですが、場合によっては保証人も一緒に提起できます。
訴訟を提起するには費用がかかります。訴訟金額にもよりますが、100万円だとすると印紙代が1万円程度、その他に郵送代などとして数千円必要です。
訴えが受理されると、借主側に訴状が送られます。保証人を一緒に提起した場合は、借主と保証人、それぞれに訴状が送られます。訴状には裁判期日が記載されていて、その日に裁判が開かれます。

家賃滞納が3ヵ月分以上あれば、よほどの事情がない限りは、大家さんの訴えが認められます。

判決が出てから2週間、不服申し立てがなければ判決が確定します。これをもって強制執行を行えるようになります。
訴訟提起が遅くなれば、その分、家賃滞納も増えていきます。裁判を起こすと決めたら、粛々と進めることが肝心です。

裁判にかかる期間

家賃滞納による裁判の場合、契約違反が明らかなので、判決が出るのも早いのですが、借主側が出廷しないような一番早く判決が出るケースでも3ヵ月はかかります。
通常は半年ほどで判決が出ますが、借主が争っている場合には、もっとかかることもあります。判決後、控訴されると、更に時間を要します。

裁判に関連する費用

弁護士費用は判決にかかわらず自分持ち

家賃滞納で裁判が行われた場合、どんな判決が出たかにかかわらず、自分の弁護士費用は各自が賄わねばなりません。
それに備え「借主の契約違反によりトラブルが起こった場合は、借主が大家の分の弁護士費用も負担する」というような特約を付けておく大家さんもいらっしゃいます。

家賃が回収できないこともある

借主や保証人に支払い能力があれば、差押えなどで家賃を回収できますが、そもそもお金を持たない人からは回収しようがありません。そうなると大家さんは諦めるしかなくなってしまいます。

強制執行費用は大家さんが立て替えなければならない

強制執行が行われることになると、その費用はいったん大家さんが予納金として立て替えねばなりません。
・強制執行の費用
・荷物の撤去費用
・撤去した荷物の保管費用
これらの費用は、後で借主に請求はできますが、先に大家さんが支払います。部屋の広さやモノの量にもよりますが、数十万~百万円程度はかかると思っておいた方がいいでしょう。
その費用は、借主に支払義務がありますが、回収できるとは限りません。

賃貸トラブルを未然に防ごう

裁判を起こすと、大家さんは多額の費用負担を強いられますし、借主との間にも嫌な気持ちが残ります。他の住民の目も気になります。
一度、トラブルに発展してしまうと、お互いにいいことはありません。では問題が起こる前にやっておくべきことは何でしょうか?
廃れたアパート_家賃滞納、トラブルにならないための対処方法は?[弁護士監修コラム]

家賃滞納を見逃さない。毎月の管理はしっかりと

大家さんが家賃が支払われていないことに気づかず、支払いを督促しなければ、契約は自動更新していってしまいます。
「家賃は勝手に振り込まれてくる」とは思わずに、毎月きちんと支払いがあるかどうかをチェックすることが肝心です。それを怠ったがために、「気づいたら滞納家賃が膨大な額になっていた」というケースは意外と多いのです。
例えば、1ヶ月おきに家賃が振り込まれていると、きちんとチェックしていなければ、気づかないこともあるでしょう。また、どんぶり勘定で通帳を確認していないと、まったく支払われていない事実に何年も気づいていなかったという事態も起こり得ます。

特に、大家さんが高齢であったり、入院したりして、ご自身で家賃の管理ができない状態にある場合は要注意。ご家族は、どこに通帳があるか、どの銀行に振り込まれているのかも知らず、意図せずほったらかしになっていることがあります。

家賃滞納を見つけたら、すぐに督促を

家賃の滞納があったらすぐに借主に連絡します。大家さんからまったく催告していないと、法律的にも権利を主張しづらいくなりますし、借主も払わないことが当たり前になってしまいます。大家さんが常に目を光らせていると感じさせることで、長期化するトラブルを防げる場合もあるのです。

保証人の経済状況をしっかり確認

いざというときのために保証人の身分はきちんと確認しておきましょう。保証人を二人にする、必ず連帯保証人にするなど、万が一のことを考えておくことが大切です。保証人に支払い能力がなければ、最終的に大家さんが負担するしかなくなってしまいます。

契約書への署名捺印だけでは安心できません。偽造の恐れがあるからです。「保証人本人に電話でその意思を確認する」「保証人の印鑑証明書を提出してもらう」など、保証人となる意思があるのか、本当に本人による署名捺印なのか、確認します。
何か起こってから保証人欄に記載のある人物に連絡し「保証人となった覚えはない」と言われてしまったら、大家さんは保証人に弁済してもらえない可能性が出てきてしまいます。

家賃の高いエリアにあるなら保証会社をつけることを条件にするのもおすすめです。

古いアパートやマンションは管理の手間がかかる。手放すことを含めてよく検討を

空室が目立ってきて、家賃滞納者が出るなどのトラブルも発生しているのであれば、思い切って、建物を解体し、土地を手放すことを検討してみるのもいいかもしれません。
特にご自身亡きあとに相続人となる予定のお子さんたちが、先祖代々の土地を離れて久しく、愛着を持っての管理ができない場合、古びたマンションやアパートの管理を任せるのは難しいものです。
長年住んでくださった借主の皆さんにご迷惑をおかけする前に、少しずつ準備を進めていけば、お互いが円満にその後を暮らすことができるはずです。

立退料の支払い提示により正当事由と判断され借家契約を解除できる場合がある

崩れた壁_家賃滞納、トラブルにならないための対処方法は?[弁護士監修コラム]
建物の老朽化などで借主の安全を確保できないといった理由があれば、賃貸契約の解除ができることもあります。
立退料を支払うことを条件に入れ交渉すれば、正当事由であると認められる可能性は高まります。築数十年で安全性が確保できないほどに古びているのであれば、それなりの金額を借主に支払って退去してもらい、土地を売却するのも一つの手でしょう。

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