通常の不動産とはちょっと違う?「農地」の相続手順

農地,相続

相続コンサルタント会社 ニーズ・プラスコラム担当の野呂です。

通常、土地を相続した場合、土地の名義人を変更したり、地主さんに借地人が代わることを連絡したりします。しかし、その土地が農地だった場合は、通常の手順のほかに、農業委員会に届出をする必要があります。

今回は、農地を相続したときの相続人の手順について解説いたします。

農地には「農地法」が制定され、農業委員会が深く関係している

農地を相続した場合、「農地法」に基づき、農業委員会に届け出ることになります。

農業委員会とは、農地法における許可を出すなど、農地に関する業務を担っている行政機関です。農業委員会の設置は、地方自治法(※)により「農業委員会は、別に法律の定めるところにより、自作農の創設及び維持、農地等の利用関係の調整、農地の交換分合その他農地に関する事務を執行する。」(地方自治法第202条の2、第180条の5第3項)と定められています。

農地には「農地法」という法律が適用されます。農地の保護や権利関係に関する基本的な法律で、1952(昭和27)年に制定されました。
農地法では、耕作者の地位の安定や、農業生産力の増進を目的として、農地所有権の移転や利用権の設定について制限を加えています。

※地方自治法(ちほうじちほう):都道府県・市町村(地方公共団体)を治める組織の運営に関して定めている法律。日本国憲法第8章第92条~95条「地方自治」の内容に基づき、1947(昭和22)年より施行されている。

「農地法における許可」とは?

「農地法における許可」とは、農地法に基づき、農業委員会または都道府県知事・市町村長への届出によって農地に関するさまざまな許可を与えるものです。農業を営んでいた農地の転用を制限し、農地のまま名義人を変更したり、人に貸したりすることで農地を確保できるだけでなく、農地を耕してもらうことで農地の荒廃を防いでいます。

農地法における許可には、第3条(所有権や賃借権の移転・設定)・第4条(農地を農地以外に転用)・第5条(農地を農地以外に転用し、権利を移転・設定)の3種類があります。

農地の相続で必要になる手続き

相続が発生したら、相続税の納付期限である10ヶ月までに、さまざまな手続きを取ることになります。その際、土地の相続の手続きの他、農地ならではの手続きも必要です。

相続税の猶予特例に関するものがほとんどですが、後に遺される家族に相続税の負担をかけたくないとお考えの方や、相続税をなるべく抑えたいとお考えの方は、ぜひこちらを参考にしてください。

相続税の猶予特例に関しては、後ほどご説明いたします。

農地を相続したら、農業委員会に届出を

農地を相続した場合は、事前に農地法の許可を得る必要はありません。しかし、相続開始から10ヶ月以内に農業委員会に対して届出をする必要があります。届出をしていないと、相続人に対して10万円以下の罰金が課せられます。

「相続税納税猶予適格者証明書」を、農業委員会に発行してもらいましょう

「相続税納税猶予適格者証明書」とは、農業相続人(※)が相続税の猶予特例を申請する際、猶予申請書に添付する書類です。この書類があることは、農業相続人が相続税の申告期限(相続が発生してから10ヶ月後)までに農業経営に従事し、将来も農家を続けることに対する農業委員会のお墨付きが得られたことを意味します。

相続税納税猶予適格者証明書を入手するには、相続税の申告期限の2ヶ月ほど前までに、農業委員会に相続税納税猶予適格者証明書の発行を申請します。その際、農業相続人は、猶予を受けたい農地の地目、面積、耕作状況などを申請書に詳しく記入しましょう。

農業委員会から派遣された農業委員の農地調査の結果を受け、相続税の納税猶予が妥当と認められれば、農業委員会から相続税納税猶予適格者証明書を発行されます。

※農業相続人(のうぎょうそうぞくにん):農地を相続し、将来も農業を続けると農業委員会から認められた相続人のこと。

相続税納税猶予が認められた場合、農地を担保に入れる手続きを実施

被相続人の住まいがある地域の国税局または税務署に、「担保提供書」を提出し、農地を担保に入れる手続きを取ります。このとき、実印と印鑑証明書、抵当権設定登記承諾書もそれぞれ持参します。

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農家の相続税納税猶予の特例とは?

農家の相続税納税猶予の特例とは、農業相続人が農家の後継ぎとして、相続した農地などで引き続き農業を営むと、相続税を当面納めなくてよいという制度です。

納税猶予の特例の適用を受けるには、以下の条件を全て満たさなければなりません。

  • 相続する農地は、生前農業を営んでいた被相続人が耕していた農地であること。
  • 農業相続人は、相続発生後10ヶ月以内に農地を取得し、農業に従事すること。
  • 相続発生後10ヶ月以内に、農業委員会から相続税納税猶予適格者証明書を発行してもらっていること。
  • 猶予を受ける税額に見合う農地を担保に入れること。
  • 相続した農地で農業を続けること。
  • 3年ごとに継続届出書を提出して、農業の継続を証明すること。

ただし、農業を営まなくなって農地を手放すことになった場合、譲渡した日の翌日から2ヶ月以内に、農地を手放した日まで猶予されていた相続税額と、一定の割合で計算した利子税の合計額を納付する義務が発生します。

また、3年おきの継続届出書を期限までに提出しなかった場合には、届出書の提出期限の翌日から2ヶ月後に、届出書の提出期限まで猶予されていた相続税額と、一定の割合で計算した利子税の合計額を一括で納付しなければならないので、注意が必要です。

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